ウエリントンの
気候リサーチ

― 気候科学と資本市場の知識の融合 ―

気候変動リスクは社会・経済を揺るがす重要な課題です。
それゆえ、気候変動のインパクトが金融市場に与える影響をもっと深く理解する必要があります。
ウエリントンは気候科学と資本市場の架け橋となることをめざし、
世界有数の独立系科学研究機関「ウッドウェル気候研究センター」と共同調査を開始しました。

世界有数の 独立系科学研究機関
「ウッドウェル気候 研究センター」と提携

気候変動リスクの分析は予測データの「精度」がカギ

気候変動の影響を分析してそれらを運用成果の向上につなげるポイントは、ベースとなる気候変動予測データの「精度」です。実績豊富な専門機関の、科学的根拠に基づく予測データを活用することで、初めて気候変動のインパクトを投資機会に変換することが可能といえるでしょう。

気候変動の影響の分析は仮説(予測)がすべてであり、その仮説を正しく理解するには高度な知識が求められます。そうした前提条件を満たすには、気候予測の専門組織との提携が欠かせません。

このような気候変動予測データの「精度」にこだわる哲学の結論としてたどり着いたのが、世界有数の独立系科学研究機関「ウッドウェル気候研究センター」(以下「ウッドウェル」)とのパートナーシップでした。

たとえ今、人間の活動による温暖化ガスの排出量をゼロにしても、
少なくとも今後300年近く地球の気温は大きく下がらない。
これ以上悪化してからでは手遅れになる。

(ウッドウェル気候研究センター フィリップ・ダフィ博士)

ウッドウェルを深く知る8つのキーワード

Man measures the soilウッドウェル気候研究センター ©ウッドウェル
組織

ウッドウェル(旧ウッズホール研究センター)は1985年、ジョージ・ウッドウェル博士により米国マサチューセッツ州ウッズホールに創設されました。現在の従業員は約70人、うち3分の2は科学者です。

Man measures the soil北極圏の生態系の変化を研究 ©ウッドウェル
哲学

ウッドウェルは、利害関係者、意思決定者などと協働しながら実用的な知見や洞察を訴求し、厳密な気候科学の調査研究が社会に与えるインパクトを最大化するために活動しています。科学はゼロサムゲームではなく、常に学ぶべきことがあり、気候の未来に関する知見や洞察の需要は無限です。ウッドウェルの役割は気候科学の分野を切り開き、満たされていないニーズや知識のギャップを特定し、それらを埋める相乗効果の機会を引き出すことです。

Man measures the soil二酸化炭素監視機器の設置 ©ウッドウェル
気候科学者

気候科学者は、気候を形成する大気、地質、生態学的プロセスから、自然環境、社会経済、人の健康に与える異常気象や急激な気候変動の影響まで様々な分野を調査・研究します。気候危機の理解を深めるためには、政治学や心理学など必要な専門分野は多岐にわたります。ウッドウェルの気候科学者は、1年の一部を野外調査や研究室で実験に費やしています。これらの調査や実験を成果として発表するには統計解析が必要で、科学者は膨大な時間をかけて数理モデルを組み合わせながら予測を算出します。

Man measures the soilフィリップ・ダフィ博士 ©ウッドウェル
優位性

ウッドウェルは米国のほか、ブラジル、ロシア・シベリア、コンゴ民主共和国などに活躍の場を広げ、NASA(米航空宇宙局)や世界銀行、各国政府機関などと協働研究を行っています。欧州の国際気候ガバナンスセンター(ICCG)は、4年連続でウッドウェルを世界トップの気候変動シンクタンクとして評価しています。ウッドウェル代表のフィリップ・ダフィ博士は、バイデン政権における科学技術政策局初の気候環境部門の気候科学アドバイザーに就任しました。

Man measures the soilCOP25  ©ウッドウェル
貢献

国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、4年ごとに各国の政府から推薦された科学者が参加し、気候変動・地球温暖化に関する科学的・技術的・社会経済的な評価を行い、最新の研究成果を報告書にまとめています。ウッドウェルは国連気候変動枠組条約(UNFCCC)の発効を支援し、IPCCの設立から全報告書の作成に参画。代表のダフィ博士や上級研究員、科学者らは、米国元副大統領アル・ゴア氏と共に2007年のノーベル平和賞を受賞したIPCCチームの一員として貢献しました。

Man measures the soil永久凍土融解がもたらす温暖化進行に着目
先進性

ウッドウェル創設者のジョージ・ウッドウェル博士は1980年代、地球温暖化と森林や他の自然生態系の役割に着目。凍っていた北極圏の土壌「永久凍土」が融解し始めると、温暖化ガスが大気中に放出され、温暖化が進行する危険があることにいち早く警鐘を鳴らしました。今日、ウッドウェルの気候科学者らは、永久凍土の融解による温暖化ガスの排出量を定量化。さらに推進要因を理解し、それらの重要な情報が、気候モデルや気候関連の政策の枠組みに組み込まれるような研究・活動に取り組んでいます。

Man measures the soil農地拡大のため森林面積が激減 ©Paulo Brando
注目テーマ

ウッドウェルの研究者らは森林と土壌に焦点を当て、自然生態系と土壌管理を活用し大気から温暖化ガスを吸収する方法を探ってきました。2019年の論文では、森林土壌の炭素貯蓄効果により、パリ協定の目標を達成するのに必要な温暖化ガス排出削減量の3分の1を吸収できる可能性があると強調しています。人類が約1万2千年前に土地を耕し始めて以来、土壌中の約1,330億トンの炭素が大気に放出されました。言い換えると、土壌が適切に管理・修復できれば炭素を土壌中に蓄積できることになります。

Man measures the soil©ウッドウェル
提携

ウッドウェルとの提携はウエリントンの気候リサーチをさらに進化させました。精度の高い野外調査データ、衛星データ、コンピューターモデリングを活用した調査研究情報へのアクセスが可能になり、グローバル規模はもちろん、より局地的な科学的知見を得ることもできます。科学界との関係は厚みを増し、ハリケーン分析モデルの第一人者とも連携しています。ウッドウェルの調査研究データは目的に合わせてカスタマイズできるため、顧客や企業との対話をより有意義なものへと昇華させてくれます。

ウッドウェルとの共同調査の目的

ウエリントンは2018年9月にウッドウェルと提携し、気候科学者らと気候変動が資本市場に与える物理的リスクの共同調査をスタートしました。

科学と金融の知識を融合し、気候変動が資本市場に与える影響を定量化する分析ツールの開発により、気候変動がどのような影響を、どの分野・地域に与えるかなどを詳細にリサーチ。気候変動の影響に関する理解を深めることにより、新たな運用ツールや革新的な調査・分析方法の開発、運用プロセスへの組み込みなどを通して、物理的リスクの分析の強化と長期的な運用成果の向上をめざしています。