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アダム・バーガー
- マルチアセット・ストラテジー・ヘッド
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多くのアセット・オーナーは、最近のバリュー株のアンダーパフォーマンスにもかかわらず、依然としてバリュー株をポートフォリオの中核的エクスポージャーとして注目しています。マルチアセット・ストラテジー・ヘッドのアダム・バーガーと株式ポートフォリオ・マネージャーのナタリヤ・コフマンが、レジリエントな(耐性・回復力のある)バリュー株、破壊的なテーマ、魅力的なセクターや国別の投資機会などについてご紹介します。
アダム:長年のバリュー投資家として、現在のバリュー銘柄のパフォーマンス低迷期間をどのように捉えていますか?また、今後のバリュー株の軌道を変える要因は何でしょうか?
ナタリヤ: 考慮すべき要因はいくつかあると考えます。この10年間は歴史的な低金利が続きました。資本コストが低下したことで、長期的な成長を視野に入れ、現在のフリーキャッシュフローを伴わない投資を正当化することが容易になりました。また、ハイテク、医薬品、バイオテクノロジーなどの分野で見られたように、イノベーション(革新)の時代でもありました。その結果、ディスラプション(創造的破壊)は市場全体に影響を及ぼしましたが、特にバリュー志向の業界に影響を与えました。いくつかの例を挙げると、オンライン小売への移行に伴う一般消費財分野、電気自動車(EV)への移行に伴う自動車製造分野、デジタル・バンキングの代替手段の出現に伴う金融分野、再生可能エネルギーの増加に伴うエネルギー・公益事業分野などにおけるディスラプションが見られました。
バリューの軌道を変える要因として、これらの業界内で、規模、専門知識、バランスシートの柔軟性を備えたフランチャイズ企業というレジリエントな企業が出現していることを、市場はまだ十分に認識していないと考えます。これらの企業は、成長企業と同様に技術革新に投資しており、投資を維持するためのバランスシートとキャパシティを兼ね備えています。そのため、このような強靭な企業とそれ以外の企業間に棲み分けが生じ、次の10年がこれまでの10年と大きく異なるものになる可能性があるでしょう。例えば、小売業界では、少数の強力な実店舗型小売企業が出現し、自動車業界では、EV新興企業が既存企業との競争激化に直面しています。しかし、市場は引き続き、レガシー企業は長期的に競争できず、価値を生み出すことはできないという考えに固執しているようです。そこでバリュエーションの重要性が出てくるのだと考えます。
アダム:ご指摘の通り、過去10年間は「破壊的なイノベーション」が大きなテーマでした。しかし2023年には、米国の銀行システムに対する懸念から、生成AIの台頭、まったく新しいカテゴリーのダイエット薬まで、さまざまな変化がありました。これほど多くの変化が進行中の中で、あなたはバリュー投資のユニバースについてどのように考えますか?
ナタリア :バリュー投資は長期的な視点を必要とし、それは今日の破壊的なテーマにも当てはまります。米国の銀行セクターは2023年初頭に試練に見舞われましたが、多くの投資家や規制当局にとって、世の中にはレジリエントな企業が存在し、そうした企業が台頭するには忍耐が必要であることが証明されたと考えます。したがって、変化の時代にバリュー・ポートフォリオを管理する際には、レジリエントな企業に投資することが重要です。
ヘルスケアセクターもまた、市場から十分に認知されていない一定程度のレジリエンスとイノベーションが存在するセクターです。糖尿病や肥満症の治療薬として知られるGLP-1受容体作動薬(GLP-1)が市場の注目の的となっているため、例えば希少疾患の治療薬や免疫腫瘍学など、他の多くのイノベーション分野がある程度見過ごされていると言えます。
最後に、人工知能(AI)技術のような破壊的イノベーションは画期的ではありますが、バリュー投資家としては、過去12ヶ月間、このような分野での直接的なプレーヤーである企業の株価の高値と市場の期待には懸念があります。一方、そのような直接的なプレーヤーの周囲で成長しつつあるエコシステムには、認知度は低いものの、徐々に頭角を現し、長期的に収益を伸ばす可能性のある企業など、興味深い投資機会が存在すると考えます。
アダム:アセット・オーナーからバリュー分野で最も重要なセクターについてよく質問を受けますが、セクターについてどのようにお考えですか?
ナタリア: ボトムアップ投資家として、私はセクターレベルの判断よりも個々のアイデアに重点を置いています。しかし、一歩下がって市場やセクターをより広く見ることは有益です。私はサイクルとスーパーサイクルという文脈で考えることが多々あります。現在、私たちはテクノロジーとAI関連のアプリケーションに牽引されたスーパーサイクルを見ています。しかし、個々の投資機会を後押しする、非常に興味深いサイクルも世界的に複数存在しています。例えば、ヘルスケアについてはすでに述べた通りです。また、アナログ半導体やネットワーク機器などのテクノロジー産業も、AIが広く市場に浸透すれば恩恵を受ける可能性のある分野ですが、現在は市場の関心から外れています。
また、消費関連株、特に欧州の消費関連株、エネルギー、運輸、公益事業、金融セクターなどにも注目しています。
アダム:欧州の話がありましたが、現在、米国外でのバリュー投資は米国内とどう異なるのでしょうか?
ナタリヤ :現在、米国外にはより多くの投資機会があると考えています。バリュエーションはその一端を物語っています。図表1に示すように、現在の米国のバリュエーションは過去の範囲を大きく上回っていますが、欧州や新興国を含む他の市場はより魅力的です。マグニフィセント・セブン(米国主要テクノロジー企業7銘柄)を除いても、米国のバリュエーションは依然として高い水準にあります。
図表1
バリュエーションの地域別格差
現在および過去のバリュエーション比較(12カ月先予想PER(株価収益率))
出所:MSCIのデータに基づきウエリントン・マネージメント作成。2023年12月時点。上記地域はMSCI地域指数同様の地域を示しています。米国(ビッグテックを除く)は、MSCI米国指数のマグニフィセント・セブン銘柄(アップル、アルファベット、アマゾン、マイクロソフト、メタ、エヌビディア、テスラ)を除いています。※上記は過去の実績および将来の予想であり、将来の運用成果・市場環境等を示唆・保証するものではありません。
また、米国対米国外のパフォーマンスは歴史的に非常に長いサイクルで変化してきました。米国外市場が米国市場を最近ほどアンダーパフォームしたのは1998年のことです。アジア金融危機後、米国外市場のアウトパフォーマンス期間が始まり、2008年の世界金融危機でピークを迎え、その後米国市場がパフォーマンスを取り戻しました。もちろん、バリュエーションの出発点が低いからといって、将来のリターンを保証できるわけではありません。しかし、ファンダメンタルズに基づけば、優れたコーポレート・ガバナンス、バランスシート、配当を持つ企業など、米国外にも魅力的な投資機会が幅広く存在すると私は考えています。
アダム:2024年3月に実施したアセット・オーナーに対する調査では、アセット・オーナーの3分の2が2024年にバリューのアロケーションについて検討していると回答しました。その一助となるよう、最後にこのテーマについて私自身の考えをお話しします。
長期的な視点ではバリューを信じる一方、目先の見通しは不透明
バリュエーションは長期的な投資成果に欠かせないと私は考えています。同時に、世界的な金融危機以降、市場では割高な企業ほど同業他社を上回る収益成長を遂げています。そして、AIによって、このグロース企業のアウトパフォーム期間が延長される可能性もあると見ています。
バリューに対する短期的なカタリストがない場合もバリューとグロースのバランスを取ることが重要
株式ポートフォリオをやや手つかずのままにしているアセット・オーナーは、現在、グロースを大きくオーバーウエイトしている可能性があります。現在の経済サイクルを考慮すると、これは重要なリスク要因となり得ます。さらに、当社のインベストメント・ストラテジー&ソリューション・グループ(iStrat)は、バリュー投資に適用される伝統的な「経験則」について疑問を呈しています。実際、不況や弱気相場に見舞われた場合、バリューがアウトパフォームする可能性は十分にあります。例えば、1999年の米国では、市場全体が売り込まれたにもかかわらず、バリューは非常に好調でした。
最後に、バリュー投資には、コアバリュー、ディープバリュー、そして時に見過ごされがちなクオリティバリューなど、様々なアプローチが存在します(クオリティバリュー投資に関してはこちらの記事をご覧ください)。ポートフォリオにバリューへのエクスポージャーを追加する際には、ある程度の分散を検討する価値があるでしょう。