クオリティバリュー投資:支払っただけの(以上の)対価を得られるか?

2025-04-08
アーカイブ info
アーカイブの記事内の作成者の見解は、過去の作成時点の情報に基づくことをご留意ください。
1128894742

クオリティバリューの定義に合った企業を探す際に、私たちが念頭に置く重要な特徴はレジリエンス(耐性・回復力)です。

第一に、クオリティとレジリエンスはしばしば密接に関連していますが、レジリエンスは「将来の」クオリティを測定するものです。必ずしもレジリエンスが高くなくても、銘柄によっては高クオリティであることもあります。私は以前、自動車のエンジンを設計するエンジニアだったことから、最初に思い浮かぶ事例は自動車に関係するものです。すべての車は時間の経過とともに価値が下がりますが、高級車は周知のとおり、最も早く価値が下がる傾向にあります。しかし、長期間にわたって耐え抜き、向上するクオリティ、すなわちレジリエンスは特別なものだと考えます。

また、レジリエンスは逆境に直面したときに明らかになります。企業の面接を受ける際に、逆境に直面した経験を聞かれることがしばしばありますが、それには理由があります。困難をうまく乗り越えた人は、将来のストレスを容易に管理する対処法を身につけている可能性が高いのです。

こうした2つの信念がポートフォリオ・マネジャーとしての私の個人的な投資哲学を形成しています。私は、レジリエンスはクオリティの過小評価された側面であると考えています。そして、困難な時期をうまく乗り越えた企業は、変化する競争、規制、社会、気候環境に適応する際に優位に立てる可能性があると見ています。重要なのは、こうした困難な時期は、魅力的なエントリーポイントで高クオリティ企業の株式を購入できるようになるなど、長期投資家に価値をもたらす可能性が高いということです。

クオリティバリューの見つけ方 

エンジニアを職業としてきた私にとっては当然のことながら、私はプロセスを最重視しています。エンジニアはプロセス指向が強いため、私がかつてそうであったように、橋を建設したり、交通システムを計画したり、自動車のエンジンを設計したりする場合に、プロセス重視は理にかなっています。ポートフォリオ・マネジャーとして、私は同じように手堅いアプローチを適用することを目指しています。

私たちのプロセスが取り組むべき主な課題の一つは、大型株投資が効率的な市場であるという事実です。どのようにして市場の非効率性を見出し、過小評価されている成長株を見つけ出せばよいのでしょうか。私と私のチームは、バリュー、配当、レジリエンスといった3つの重要なレンズを通して企業を見ています。私たちはスコアカードを利用して投資対象企業を評価し、定量的な枠組みを用いることにより、新たなアイデアを選別し、将来の分析に役立つアイデアを明確にし、ポジションサイジングを決定します。ESGは、投資プロセスにおけるもう一つの重要なインプットであり、レジリエンスの分析に特に関連しています。具体的には、ESG論争、ガバナンス、経営文化は私たちにとって重要な考慮事項となります。ダウンサイドリスクの理解に役立つほか、バリュエーションの改善と密接に結びついていることが多く、私たちの投資哲学に自然に適合しているでしょう。

では、これはどのようにして繰り返し活用できるプロセスに変化するのでしょうか。

1つ目に、私たちは割安な水準で購入します。割安な水準で取引されていない限り、それ以上買い増すことはありません。

企業が一時的に割安水準にある理由として共通するのは、さまざまな問題や対立の存在です。市場はネガティブな情報には直ちに反応しますが、長期的な視点に立った反応は鈍いものです。市場が企業を見限った場合、それは私たちがより綿密に調査し、投資を検討すべきサインとなります。ネガティブな見方が正当化されるのか、それとも短期的な障害に過ぎず、単に前向きな長期的成長への道から目をそらしているだけなのか。バリュートラップ(割安のわな)を回避し、長期的な成功を重視するのであれば、その質問に対する明確な見解を持つ必要があります。

私たちのアイデアの大半は、巨大多業種企業や景気循環型産業を対象にしたものです。多くの場合、こうした企業を取り巻く環境は極めて複雑であり、投資家は透明性がない限り、安心していられないことから、非効率性を生む可能性があります。ジョンソン・エンド・ジョンソンはその好例であり、医薬品、医療機器、生活必需品の3つの事業からなる複合企業です。私たちは、工業、金融、公益事業といった分野の景気循環型企業が人気圏外にあるときに注目するのを好みます。私たちの時間軸は長いことから、景気サイクルが好転するまで待つことを恐れません。

私たちが2つ目に重視するのは配当です。持続可能な配当は、ダウンサイドプロテクションや複利ベースのリターンの潜在的な源泉となり得ますが、投資元本の成長を重視する投資家はこれらを十分に評価していない可能性があります。さらに、強固なバランスシートと、好調な時期も困難な時期も一貫して配当を支払ってきた実績が示すように、事業への投資能力と配当支払いとのバランスを取ろうとする企業の意志は、クオリティバリュー企業と、解決困難なバランスシートや事業リスクを抱えるディープバリュー企業とを見分ける強力な手段になり得ます。

最後に、私たちは企業の潜在的なレジリエンスを評価します。レジリエンスの分析は科学というより芸術に近いものかもしれませんが、私たちの経験では、レジリエンスの高い企業はその分野で深い専門性を発揮しており、お客様のために永続的な価値を生み出す傾向にあります。また、スケールメリットを享受する傾向もあり、営業上のレバレッジや、競合他社にとって自然な参入障壁となるといったメリットも受けています。強固なバランスシートは、企業が継続的に配当を実施する可能性を高めます。一方、バランスシートの柔軟性はレジリエンスを評価する際に特に重要であり、投資と配当継続の可能性を示し、投資家のボラティリティを長期的に低下させる可能性があります。

さらに、ダイバーシティとインクルージョン指標でリードする企業は、株主や地域社会により優れた長期的成果をもたらすと考えています。また、気候変動緩和への積極的な関与は、リターンの向上と事業リスクの低減につながると考えます。私たちは特に経営文化に注目しており、実際に多様性を持つ取締役会や経営陣は、より優れたリスク管理と資本配分の意思決定と整合する傾向にあります。2

こうした私たちが注目するポイントは、魅力的なエントリーポイントになりますが、多くの場合、ESGに関連しています。繰り返しになりますが、これは往々にして私たちがより深く掘り下げるきっかけとなります。どのようなダウンサイドリスクがあるのか、ESGの問題は根深いものか、会社は改善の道を歩んでいるのかなど、私たちは理解を深めたいと考えています。企業が改善策を講じる意思がある場合、私たちは企業と長期的に有意義なエンゲージメントを実施し、企業が前向きな意思決定を行うよう導き、最終的には当該企業のバリュエーションを向上させることができると考えます。

レジリエンスを重視することの利点 

何よりも、割安水準で購入したレジリエンスの高い配当企業は、魅力的な長期投資先になり得ると確信しています。こうした企業は、時間をかけて進化し、市場の混乱を乗り越えられるだけでなく、さまざまな市場環境下でダウンサイドリスクを緩和できる可能性を秘めた「実戦に耐え抜いた」企業と言えるでしょう。

 

1The portfolio does not have a sustainable investment objective. While the evaluation of Sustainability Risks through the analysis of ESG factors is part of the investment process, it may not necessarily result in the exclusion of a security. 

2The Strategy commits to invest at least 60% of its net assets in companies with more than three women on their board.

nataliya-kofman-87038

ナタリヤ・コフマン

株式ポートフォリオ・マネジャー