今が好機 ― バイオテクノロジーセクターへのアクティブ投資

2024年11月
2027-11-18
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世界のバイオテクノロジー市場は、さまざまな要因が重なり、強力な追い風が吹いていると私たちは考えています。バイオテクノロジーセクターのファンダメンタルズは、ここ最近のどの時点よりも好調であり、加速するイノベーション(革新)が画期的な新しい治療法を生み出しています。また、優良企業は強固なバランスシートを維持し、将来の成長を支えるための十分な資金を確保していると見ています。企業の潤沢な資金と金利低下の可能性は、株式市場におけるM&Aを活発化し、バイオテクノロジー企業のバリュエーションは依然として魅力的です。本稿では、私たちが同セクターを楽観視する理由と強気相場シナリオに対する潜在的なリスクについて詳しくご説明します。

業界のイノベーションを牽引する中小型のバイオテクノロジー企業

現在、中小型のバイオテクノロジー企業は、バイオ医薬品のイノベーションの先陣を切っています。これらの企業は、業界の研究開発(R&D)パイプラインの3分の2を占め、そのシェアは着実に拡大しています1。腫瘍学、神経科学、希少疾患や自己免疫疾患などの主要な治療領域で大きな進歩が見られ、精密な小分子阻害剤、抗体薬物複合体(ADC)、細胞治療、バイオ医薬品における専門技術の発展により、疾病治療において飛躍的な進歩を実現しています。私たちの調査では、このような専門技術の科学的進歩は一様ではないことがわかりました。実績のある技術力を有するバイオテクノロジー企業、中でも中小企業は、革新的な治療薬を特定し、生み出す能力が高いことが示されています。

最も革新的な技術や製品を持つ企業に対する資金調達環境の向上

利益をまだ上げていない上場バイオテクノロジー企業は、以前よりも資本が充実していると考えています。最も強固なバランスシートを持つ企業は、最も革新的な技術や製品を持つ企業に集中しています。2021年半ばからセカンダリー市場での資金調達がますます選別されるようになり、その結果、このような企業は恩恵を受けています。それ以来、2024年第1四半期の急増を除けば、バイオテクノロジー企業がセカンダリー市場で資金調達を行う回数は比較的安定していますが、それぞれの募集における平均調達規模はかなり大きくなっています(図表1)。

図表1は、市場が主に少数のより優良な企業に資本を配分していることを示しています。この資金調達により、優良なバイオテクノロジー企業は、追加資本を必要とせずに数年間その事業を継続することが可能になります。

図表1
セカンダリー市場でのバイオテクノロジー企業の資金調達規模が拡大

セカンダリー市場での資金調達の規模が拡大

出所:Jefferiesのデータに基づき、ウエリントン・マネージメント作成。2024年8月16日時点。※上記は過去の実績であり、将来の運用成果・市場環境等を示唆・保証するものではありません。

M&Aの活発化

長年にわたり、新薬の特許の期限切れによって患者がより安価なジェネリック医薬品に乗り換え、特許によって保護されている医薬品からの利益が減少するため、大手製薬会社は常に買収によって収益を補わなければなりません。世界の大手製薬企業14社では、2030年までに年間売上高3,000億米ドル以上が特許切れとなるため、その代わりが必要となります2

同時に、これらの大手製薬会社は5,000億米ドル以上の資金を有すると推定されるため、その資金を基に新しいイノベーションを生み出すことができるかもしれません3図表2が示すように、バイオ医薬品企業のM&Aの件数は着実に増加しており、2023年には取引額が過去2年間の落ち込みから回復しています。

バイオ医薬品企業のM&A活動には波がありますが、長期的にM&Aは今後もバイオテクノロジー企業の収益に大きく貢献し、革新的な治療法の開発から最も利益をもたらすでしょう。

図表2
バイオ医薬品企業のM&Aは回復傾向

バイオ医薬品企業のM&Aは回復傾向

出所:Jefferiesのデータに基づき、ウエリントン・マネージメント作成。2024年5月31日時点。※上記は過去の実績であり、将来の運用成果・市場環境等を示唆・保証するものではありません。

薬価引き下げの圧力を断ち切る

当面は、米国の薬価規制が市場に悪影響を与えることが懸念されていますが、中小型のバイオテクノロジー企業は、大手製薬企業に比べ、今後も相対的に安全な投資先となることが予想されます。2022年に制定された米国インフレ抑制法(IRA)により、特定の医薬品の価格引き下げが義務付けられました。しかし、値引きやリベート(払戻金)などを差し引いた、実際に支払う正味価格の引き下げは、懸念されているほど大きくないかもしれません。さらに、薬価引き下げは、今後何年かは主に古い医薬品に適用される可能性が高いと見られています。

こうした状況により、大手製薬会社は、古い医薬品からの利益が減少し、M&Aによってその不足分を補おうとする可能性が高まるでしょう。これが小規模なバイオテクノロジー企業にとって、間接的な追い風となる可能性があります。最終的には、法律により患者の自己負担額に上限が設けられ、高価な医薬品の使用を妨げる大きな障壁が取り除かれることから、多くのバイオテクノロジー企業は利益を得ることができるでしょう。

セクター内の分散の拡大とそれを支えるバリュエーション

アクティブ投資家は、バイオテクノロジーセクターの株式リターンの分散の反発から利益を受けてきました。2022年の安値以降、バイオテクノロジー市場の代用指標であるSPDR S&PバイオテクノロジーETFの上位銘柄と下位銘柄のパフォーマンス差は拡大しています(図表3)。2024年9月30日時点で、同バイオテクノロジーETFが2021年初頭のピークから40%減で取引されていることを考慮すると、バイオテクノロジーセクターは魅力的なバリュエーション水準にあり、アクティブ投資家にとって有利な環境が続いていると見ています。市場のリーダー企業からの上向きの強いポテンシャルと相まって、分散の拡大は、経験豊富なアクティブ投資運用の重要性を浮き彫りにし、これがお客様に大きなプラスのリターンを達成する機会を増やす可能性があります。

図表3
バイオテクノロジー企業におけるパフォーマンスの大きな分散

バイオテクノロジー企業におけるパフォーマンスの大きな分散

出所:Factsetのデータに基づき、ウエリントン・マネージメント作成。※上記は過去の実績であり、将来の運用成果・市場環境等を示唆・保証するものではありません。

まとめ

バイオテクノロジー業界に対する私たちの楽観的な見通しは、これらすべての理由に起因するものです。しかし、大手製薬会社のM&Aの規模やM&A活動の回復のタイミング、薬価制度改革の影響について正確に予測することは困難です。それでも、業界の強力なファンダメンタルズ、加速するイノベーション、十分な資金調達、魅力的なバリュエーションが組み合わさり、バイオテクノロジー企業は、今後12カ月間は強気相場が続くと考えています。バイオテクノロジー業界内で株価のパフォーマンスの差が拡大していることから、ファンダメンタル投資リサーチと科学的知識の両方に基づくアクティブ運用のアプローチこそが、バイオテクノロジー市場への投資で最も効果的な方法であると見ています。

1IQVIA Pipeline Intelligence, December 2022 and IQVIA Institute, January 2023. | 2CenterView Partners. | 3Wellington Management estimates.

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ウェン・シー

グローバル産業アナリスト
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マーク・セヴェッカ

グローバル産業アナリスト