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アラン・スー
- 株式ポートフォリオ・マネジャー
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第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)の合意については様々な見方があるものの、私たちはメディアよりも前向きな見解を持っています。COP26 で採択した成果文書「グラスゴー気候合意」は、地球温暖化を抑え気候変動の深刻な影響に対処するための国際協力と行動を加速させる枠組みとなるでしょう。
主なポイント:
メディアはCOP26についてパリ協定の目標を実現するには具体策が乏しく、達成の道筋は描けなかったと批判的です。私たちもそれに対し異論ありません。温暖化ガスの排出量削減目標を当初の2050年から2030年に前倒しした結果、2010年比で45%減しか期待できず、2025年までは少なくとも温暖化ガス排出量が増え続けることが認識されました。良かれと思った変更が悪い結果を招いたという印象を与えても不思議ではありません。
石炭火力に対しこれまで以上に厳しい目が向けられましたが、土壇場で合意文章の表現は「段階的な廃止」から「段階的な削減」に書き換えられました。天然ガスなどのブリッジ燃料についても、より寛容な表現となっています。また、ネットゼロを達成するためにカーボンオフセットを活用することは建設的な策ですが、質の一貫性や商品化することが難しいため、その効果は限定的であるとみられます。温暖化ガス排出量削減目標はすべての国が厳格化しているわけではないため、それこそが最終的に最も重要だと考えます。
COP26の具体策には課題が残るものの、脱炭素の実現はあらゆる業種に何らかの影響を与える長期的でグローバル、かつ包括的なトレンドであることは間違いありません。国や企業は脱炭素の目標を達成するために、数兆ドルもの資金を投じることを掲げています。温暖化はもはや避けられず、気候変動の影響の被害を減らす「適応策」は重要な投資テーマの一つであることが認識され始めました。そのため、今後市場の拡大により需要が供給を上回ることが見込まれ、気候変動の「緩和策」と「適応策」関連株式の割引率は調整されると考えます。また、脱炭素社会への移行に向けてカーボンクレジットがより広く活用されるようになると、気候変動に有利な資産と不利な資産との間でパフォーマンスやバリュエーションの格差が広がっていくとみられます。
また下記も予想されます。
COP26では脱炭素に関する画期的な対策はありませんでした。しかし、様々な業種の企業が脱炭素のために革新的なソリューションを積極的に開発しています。持続可能な農業、炭素回収・貯蓄技術、バイオマス(生物資源)燃料、カーボントラッキング(消費活動から生じる温暖化ガス排出量を自分で計測)など、多種多様な分野で意味のある進展が進んでいます。COP26は、画期的な技術を手掛けるイノベーターに、スケーラビリティ(拡張性)が高いソリューションが巨大な世界市場につながることを鮮明にしました。
COP26は総じて気候変動の最終目標を明確にし、その達成に向けた緊急性を強調したという点では、進展を果たしたと言えるでしょう。しかし、まだ多くの課題が残っており、今後は政府や国が何を示すかよりも、何を行動するかがカギとなると考えます。
アラン・スー