債券運用者が解説

クレジット市場の現状とは ― 2024年11月

2027-12-03
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債券運用者のコナー・フィッツジェラルドが、米大統領選におけるトランプ氏の勝利がクレジット市場に与える影響を探ります。現在、クレジット投資家にとっての投資機会やリスクはどこにあるのでしょうか?

先日の米大統領選の結果を受けて、クレジット投資には短期的にどのような影響があるのでしょうか?

トランプ氏が再び大統領に就任する短期的な影響として、主に関税、移民、そして規制緩和に関連する政策の変更が挙げられます。 また、トランプ氏が望む形で進むのであれば、消費者や企業への減税もあり得ると私は考えています。既に成長している経済にとって、これらはすべて短期的にはプラスの影響を与えると考えられます。

全体的にクレジット・スプレッドにとっては非常にポジティブであると考えていますが、過去4〜6週間でトランプ氏の当選確率が高まる中、クレジット・スプレッドが大幅に変動したことを確認しています。そして、トランプ氏の勝利を背景にスプレッドは引き続きタイト化しています。

私たちが注目しているのは、これが米国債利回りにどう影響するかです。他の条件が同じであれば、トランプ政権やそのチームが示しているいくつかの政策はインフレを促進し、成長を後押しするでしょう。財政面で支援が進む環境となる可能性がある中、米連邦準備理事会(FRB)が緩和政策を継続し、利下げを続けることは難しくなるとみています。他の条件が同じで、トランプ政権が提案する政策が実現できれば、景気後退の確率は間違いなく低くなると考えます。私たちは常に米国での景気後退の可能性はかなり低いと考えてきました。

注目すべきリスクとボラティリティは、主にリスクフリー・レートと米国債利回りのボラティリティ上昇の可能性に関連しています。実際には、高い財政赤字、トランプ氏の政策の一部に関連するインフレのボラティリティ上昇、グローバリゼーションの進展に関連するインフレのボラティリティ上昇が要因であると考えています。そして、連邦レベルで多くの政策変更が行われる可能性がある局面に入っています。

クレジット投資において、どのセクターに投資機会があるとみていますか?

私たちは引き続き、金融セクターに投資機会があると考えています。金融業界内のさまざまなセクター、例えば保険会社、銀行、大手銀行、中小銀行、欧州の銀行、米国の銀行、開発企業などにおいて多くのばらつきが見られます。さまざまなビジネスモデルが今後の異なる環境に対応する準備を進めています。しかし、市場が過小評価していると考える重要なテーマの一つは、これらのビジネスには実際には高い金利構造と高い借入コストで非常にうまくいっているビジネスがあるということです。

また、エネルギーセクターも夏から秋にかけて原油価格の下落や景気後退への懸念がありましたが、その懸念は再び払拭され、いわば先送りされたとみています。私たちは、石油の将来の供給は依然として非常にタイトであるという考えがあり、引き続き長期的な構造的基盤からエネルギーセクターを選好しています。

次に通信セクターですが、資本市場が回復し、市場参加者がよりリスクの高い債券へとリファイナンスすることの恩恵を受けています。同時に、新しい政権下で合併・買収(M&A)が活発化すると、今後も恩恵を受けていく分野が多く存在するとみています。

トータル・リターンに注目するクレジット投資の潜在的な利点は何ですか? 

私たちはインカム収益(利息収入)だけでなく、投資する債券の価格変動によるキャピタル収益(値上がり益)も重視しています。つまり、インカム収益とキャピタル収益の両方、すなわちトータル・リターンの提供を目指しています。この利点は、ポートフォリオがダイナミックであることです。市場に強固なクオリティ投資の機会がある場合、お客様のためにこの機会を最大限活用するプロセスを構築しています。

次に、私たちのリターンやリターンアルゴリズムは他の多くとは異なり、インカム収益とキャピタル収益のバランスが取れています。ポートフォリオは、質の高い債券のような動きになり、デュレーションとクーポンを提供します。しかし、市場のバリュエーション機会に応じて柔軟に対応し、キャピタル収益を生み出すこともできます。また、リスクに対する補償が得られないと判断した場合には、ダウンサイドを保護します。

そして、ポートフォリオに大規模な流動性があることも特徴です。魅力的な投資機会が少ない場合は、お客様のために流動性を構築し、良い投資機会が現れたときに再びダイナミックに投資に戻ることができます。

最後に、私たちはボラティリティによる恩恵を受ける傾向があります。通常のインカム追求型とは異なるアプローチでリターンを追求します。私たちは市場の浮き沈みより投資タイミングを重視しており、ドローダウンを抑えた安定したリターンをご提供したいと考えています。

私たちは、できる限り最高のリスク調整後リターンを創出するようにお客様のために最善を尽くし、チャンスが訪れたときには最大限活用しようとしています。しかし、相場環境が不安定な場合は、より良い条件で再投資する機会を忍耐強く待ち、お客様の資本を保護することが長期的に良好なリターンを生み出す方法だと考えています。

Connor Fitzgerald

コナー・フィッツジェラルド

債券ポートフォリオ・マネジャー