債券運用者に聞く

トランプ氏勝利 ― 債券投資家への影響

2027-12-02
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インベストメント・ディレクターのポール・スキナーが米国大統領選挙の翌日、債券市場やクレジット投資に与え得る影響やリスクについて、債券運用者のコナー・フィッツジェラルドに聞きました。以下は2024年11月6日(米国時間)時点のものであり、将来予告なく変更される場合があります。

 

ポール・スキナー(以下、ポール):皆さん、こんにちは。インベストメント・ディレクターのポール・スキナーです。本日は米国大統領選挙の翌日で、その結果について債券運用者のコナー・フィッツジェラルドとお話できればと思います。まず、トランプ氏の勝利には驚きましたか?

コナー・フィッツジェラルド(以下、コナー):トランプ氏が差をつけて勝利したという点では少し驚いています。選挙についての私たちの見方は、大接戦になり、どちらに転ぶかわからないと予想していました。本日は選挙が市場に与える影響や、それを踏まえたポートフォリオの構築についての私の考えをお話しさせていただきます。

ポール:重要な点ですね。では、結果が50/50と予想していたのなら、どのようにポートフォリオを構築していましたか?また今後はどのようにポジショニングしていく予定ですか?

コナー:長期的な観点から、米国の財政赤字は大きな懸念事項です。これは誰が大統領になっても、下院や上院で誰が勝ったとしても変わらないと思っていました。強いて言えば、トランプ政権で共和党が上院や下院でどれだけの勝利を収めるかによって、財政問題が悪化するリスクはあると思います。これは債券市場にとって重要です。

今週(11月4日の週)に向けては、米国債のイールドカーブ上でポジションを取ることを選好しました。つまり、トランプ氏の勝利によって国債のイールドカーブはスティープ化が進むと考え、短期債を保有しデュレーションを短くしています。この2週間はトランプ氏の勝算が高まるにつれ、スティープ化が確実にみられており、今朝もその傾向は続いています。しかし、長期的、構造的な視点では、イールドカーブがさらにスティープ化する余地があります。これは、移民政策や関税政策、規制緩和、成長促進などがインフレを引き起こす可能性があるためです。したがって、トランプ氏の政策のほとんどは、短期的に投資判断をする期間においては成長やインフレをけん引するとみています。それが私たちがデュレーションを短縮している理由です。

ポール:デュレーションは短縮しているのですね。リスク資産についてはどうですか?この状況が進む中でクレジットについてはどう見ていますか?

コナー:クレジット・スプレッドは2024年に入ってからかなり大きく変動しています。ここ1か月だけでも相当縮小しました。つまり、クレジットに投資する時期としては今もよい時期だと考えています。しかし、年初と比べてバリュエーションの状況は良くないことを認識しています。率直に言うと、現在私たちはスプレッド・サイクルの後半にいるので、現時点では恐らく株式の方が上昇余地があると言えるかもしれません。しかし、異なるセクターやハイイールド、新興国市場では、依然として良好で特異な投資機会も一部存在すると考えます。全体的な利回りの状況は引き続き良好で、過度に信用リスクやデュレーションを取らなくてもインカムを得ることができます。

ポール:すなわち、デュレーションやクレジットはすべて理にかなっているということですね。トランプ氏が大統領になりましたが、クレジットやデュレーションに関して、何が問題になる可能性がありますか?これらの分野でのリスクは何ですか?

コナー:トランプ氏の政策の多くは現状に挑戦するような内容だと思います。関税に関しては非常に強硬な姿勢をとる可能性があります。トランプ氏は米連邦準備理事会(FRB)の意思決定プロセスに政権を関与させることについて言及しています。トランプ氏は明確に米国企業やオンショアリング(国内回帰)を支持しており、脱グローバル化の動きやサプライチェーンの分断を加速させる可能性があります。

私が考える最大のリスクは、米国債のイールドカーブの長期部分が固定されてしまうこと、もしくは単にボラティリティが高まることです。そして、最終的に金融資産のキャッシュフローを割り引く際のリスクフリーレートのボラティリティが増した場合、ある時点でそのボラティリティが高まるリスクがあります。

これはトランプ氏が最初の60日から90日で何を計画しているかを把握する際に注目している点です。

ポール:初期の段階で多くの動きが見られると思いますか?それとも関税などのさまざまなことについて、計算された動きで進めていくと思いますか?

コナー:私は計算された動きになると思いますが、トランプ氏は何をしたいのかについてはかなり明確にしています。ですから迅速に行動を起こすと考えています。

ポール:ありがとうございました。それでは今後の市場の影響を見守っていきたいと思います。

Connor Fitzgerald

コナー・フィッツジェラルド

債券ポートフォリオ・マネジャー
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ポール・スキナー

インベストメント・ディレクター