投資家は日銀の利上げに備えるべきか?

2024-12-05
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日本経済は長期停滞とデフレから、リフレと持続的成長へと変貌を遂げ、勢いを増しています。この継続的な変化の中で注目すべき重要なマイルストーン(転換点)は、金融政策の緩やかな正常化です。具体的には、持続的なリフレ環境が達成できそうであるため、日本銀行(BOJ)は事実上イールドカーブ・コントロール(YCC)の長期金利の上限撤廃を受け入れつつあるとみています。日銀の直近の修正は、2016年以来実施されているこの政策が事実上撤廃となることを示唆しています。次のステップは短期金利の利上げですが、果たして現在の市場予想より早く利上げに動くのでしょうか。

YCCの柔軟化 

日銀は、日本の長引くデフレに対抗する手段としてYCCを実施し、長期金利をコントロールするために日本国債(JGB)を購入しました。2023年7月に10年物国債利回りが1.0%に達することが許容され、2022年10月末には1.0%を厳格な上限ではなく「目途」と位置づけ、実質的に10年物国債利回りの1%超えを許容することで、金融政策の正常化に向けてさらに前進しました。

その結果、10年物国債利回りは一時0.9%を上回り、2023年7月の政策調整以降、着実な上昇が続いています(図表1)。

図表1

10年物国債利回りは上昇傾向

出所:ブルームバーグのデータに基づきウエリントン・マネージメント作成。2023年11月24日時点。※上記は過去の実績および将来の予測であり、将来の運用成果・市場環境等を示唆・保証するものではありません。 

金融引き締めの強化ではない

今回の政策修正は、日銀が金利上昇のスピードをコントロールしながら、緩やかなイールドキャップ政策へと移行したいことを市場に示す意図があったと考えます。

したがって、今回のYCC修正は、金融引き締めというよりも過度な金融緩和からの脱却を意味するでしょう。金利上昇ペースが急だと判断された場合には、臨時の国債買入や指値オペでスピード調整し、バランスシート拡大の加速を余儀なくされるリスクを回避するための「修正」であるとみています。中期的なインフレ見通しの改善に起因する金利上昇はある程度許容され、金融引き締め強化というよりも、追加緩和からの脱却の一歩と考えられます。リフレの「良い循環」が拡大し続け、経済成長の可能性がより市場の期待に組み込まれるようになれば、2024年の第1四半期にはさらなるYCC調整が実施されると予想しています。

政策当局は次に何をするのか?

インフレ見通しは間違いなく変化しており、日銀が持続可能なインフレを徐々に認めつつあることから、利上げが視野に入っているでしょう。政策当局は、2024年度の消費者物価指数(生鮮食品を除く)の前年度比上昇率の見通しを1.9%から2.8%に、2025年度の見通しを1.6%から1.7%に上方修正しました。賃上げが2.5%以上になる場合、2025年度のインフレ予測は再び上方修正され、それが利上げの引き金になる可能性も想定されます。私たちは、2024年第1四半期にマイナス金利解除となる可能性もあるとみています。

まとめ

より大局的な観点から、こうした修正は緩やかかつ漸進的で、日本の金融政策は依然として緩和的です。さらに、日本政府は物価上昇の影響を和らげるため、10兆円を超える大規模の財政刺激策を発表しました。日銀はさらなるバランスシートの拡大を余儀なくされる政策から脱却しつつある中、財政出動も考慮すると、足元の日本の経済対策全体は引き締めではなく、依然として緩和的であり、中央銀行は市場の予想よりも早く利上げに踏み切らざるを得なくなるかもしれないでしょう。

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駱 正彦(ろう まさひこ)

インベストメント・ディレクター
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マルコ・ジョルダーノ

インベストメント・ディレクター