スチュワードシップ投資のケース・スタディ

持続可能な木材企業のリサーチ

2025-02-28
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※ここに記載されているいかなる見解も、執筆者が執筆時点に入手可能であった情報に基づき策定したもので、予告なく変更されることがあります。各ポートフォリオ運用チームはそれぞれに異なる見解を持ち、顧客ごとに異なる投資判断を行うことがあります。投資価値は上昇することもあれば低下することもあります。一部のデータは第三者から取得したものです。その信頼性は高いものの、正確性や完全性を保証するものではありません。機関投資家、プロフェッショナル・インベスターおよび適格投資家への情報提供を目的としており、個人のお客様を対象とするものではありません。

スチュワードシップ投資のケース・スタディ

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背景

木材産業の追い風となる2つのトレンド

スチュワードシップ投資の運用チームは、今後2つのトレンドが木材業界の追い風になると考えています。トレンドの第1は米国内の構造的な住宅供給不足、第2はコンクリートのような炭素集約的材料から木材のようなよりサステナブルな代替材料への建設業界の転換です。

一部の業界推計によれば、世帯数の増加に新規住宅建設が追いついておらず、米国の住宅不足件数は650万戸以上に達しています。同時に、2022年のインフレ抑制法の成立により、低炭素インフラ投資が積極化し、経済の脱炭素化に向けた動きが加速しています。健全な森林は、大気からの二酸化炭素(CO2)の吸収量がその放出量よりも多い天然の炭素吸収源であることから、サステナブルな森林や造林は低コストの炭素隔離手法となっています。これらのトレンドは、サステナブルな木材企業にとって収益確保に向けた追い風となる可能性があるでしょう。

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リサーチの
焦点

競争優位性としてのサステナビリティ

私たちは、米住宅建設市場への木材製品販売から収入の80%を得ている、ある大規模な森林所有企業について調査しました。当社のリサーチ・チームは、同社が環境スチュワードシップ(環境保全)の観点からも業界で卓越した企業であると判断しました。同社は、森林を原材料とする製品を製造しながらも、そのもとの森林を恒久的に維持し、その過程で炭素を隔離することを目標としています。同社は毎年、所有する森林の2%を伐採します。その後、伐採面積の100%を再植林し、伐採した木1本につき平均2本、年間で合計1億3,000万本から1億5,000万本の木を植えています。2021年時点で世界の森林のわずか13%しか取得していない「持続可能な林業イニシアティブ(Sustainable Forestry Initative: SFI)」のエコ認証を同社の森林ポートフォリオ全体が取得済みです。2 さらに、同社は科学的根拠に基づく排出削減目標(「科学的根拠に基づく目標イニシアチブ」の承認を取得済み)を1.5℃に設定しています。森林や最終製品に蓄積されたCO2の量を考慮すると、同社は事実上、すでにカーボン・マイナスになっています。

スチュワードシップ投資の運用チームは、同社が強固な財務体質を有していると見ています。住宅サイクルや木材価格の変動の影響を受けてきたにもかかわらず、同社はその高い競争力を活かし、過去15年間にわたり好調な収益を維持してきました。同社は配当利回りを積極的に調整し、森林の炭素隔離能力の最適化を図っています。運用チームは、カーボン・オフセット市場を通じた炭素排出量の削減により、同社が恩恵を受けられるという選択肢もあると見ています。同社はすでに、補完的な炭素回収の取り組みに積極的に挑戦しています。例えば、スチュワードシップ投資の運用チームは、同社による炭素クレジットの販売、自社の土地を活用した炭素の地下貯留、太陽光発電や風力発電事業のための土地の貸与なども可能だと考えています。

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結果

より高い確信度とポートフォリオへの組み入れ

こうした様々な情報により、当社のリサーチ・チームは林産物産業の構造的基盤の他、同社の収益の変動、将来の資産価値、ESGプロファイル、長期的事業戦略など同社固有の事情をよりよく理解することができました。幅広いファンダメンタルズ分析や、同社についての知見を有する弊社内各部門の関係者(不動産、建設、コモディティ、クレジットのアナリストやESGリサーチ・チームなど)との共同作業の結果、スチュワードシップ投資の運用チームは、同社をポートフォリオに組み入れる価値があると判断しました。

1 Jones, Hannah. "US Housing Supply Continues to Lag Household Formations; Multifamily Construction Offers Alternatives,” Realtor.com, 8 March, 2023.

2 “In the struggle to make forests sustainable, how effective are verification systems?” Agence Française de Développement, 26 July 2021.