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ナネット・アブホフ・ジェイコブソン
- グローバル・インベストメント兼マルチアセット・ストラテジスト
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失業率の過去3カ月平均値が、過去12カ月の最低値を0.5%ポイント上回ると景気後退開始の目安とされる「サーム・ルール」に基づき想定されたように、FRBは0.5%の利下げを行い、景気後退の可能性は大幅に低下しました。パウエルFRB議長は市場に対し、利下げ幅は米国の労働市場に関する懸念を示唆するものではなく、FRBが完全雇用の達成という使命において後手に回らないようにするためのリスク管理措置であり、政策金利を中立水準に押し戻す方向への「力強いスタート」を示すものであると断言しました。
私たちは経験則ではなく、経済成長、インフレ、政策およびバリュエーションの見通しに焦点を当てています。また、米大統領選に関連するリスクを十分に認識しているものの、最終的には、金融政策およびソフトランディングの見通しが政治情勢よりも市場にとって重要であると考えています。そのため、グローバル株式に対して小幅オーバーウエイトの見通しを維持しています。本稿執筆時点(2024年9月末)において、米大統領選は大接戦であり、訴訟や申し立て、社会不安の懸念が高まっています。しかし、基本シナリオとして、平和的な政権の移行およびねじれ議会を予想しており、候補者が提唱する最も極端な政策は回避されると見ています。予想が正しければ、選挙に起因する変動はリスクを加える機会となり得ます。予想が誤りであれば、経済に与える影響を再評価する必要があります。
2025年末までにFRBによる1.50%の追加利下げが予想される中、株式は債券をアウトパフォームすると予想しています。過去の緩和サイクルにおけるFRBの最初の利下げ後、グローバル株式のパフォーマンスは、景気後退に陥らなかった時に良好でした(図表1の左図)。一方、債券のパフォーマンスは、景気後退環境においてわずかに良好でした(図表1の右図)。株価上昇は、超大型株以外も広がると見ています。国別では、日本株を最も選好しており、次いで米国株を選好していますが、米国については割高なバリュエーションを踏まえて中立の見通しに転じています。日銀の利上げを一因とする2024年8月の「ミニ・クライシス」の後、円のキャリー・トレードは解消されており、日銀は緩やかなペースで引き締めを進めると見込まれます。
欧州株式については、業績見通しが振るわず、不動産市場の問題や他の課題に依然として直面している中国の影響を受けやすいため、あまり楽観的ではありません。中国政府が最近発表した景気刺激策は前向きな進展ですが、それらが市場の長期的な先行きを変化させるかどうかを判断するには時間を要します。中国以外の新興国株式に対しては、バリュエーションは相対的に割高ではないものの、世界経済の成長の明白な転換点がまだ必要であるため、中立の見通しを維持しています。
図表1
利下げは経済成長を後押し
出所:Refinitivのデータに基づきウエリントン・マネージメント作成。MSCI ACWIおよびBloomberg Global Aggの1983年8月から2024 年9月までのデータを使用。NBERが定義する18カ月間以内に景気後退がある場合とない場合を比較。※上記は過去の実績であり、将来の運用成果・市場環境等を示唆・保証するものではありません。上記はあくまで例示目的で示しています。
10年物米国債利回りはFRBの利下げまでに約0.8%低下したことから、ディフェンシブな国債の上昇余地は限定的であると見ており、中立の見通しに転じています。ハイイールド債に対しては小幅オーバーウエイトの見通しを維持しています。高格付け債と低格付け債のスプレッドは、CCC格債の破綻を反映して、極端に二極分化しています。FRBの利下げはある程度の救済を提供するものの、破綻状況が直ちに変わるものではありません。そのため、ハイイールド債のスプレッドはレンジ内で推移し、リターンはクーポン・インカムによって決まると考えています。
小幅オーバーウエイトの見通しを維持しているコモディティの中では、中央銀行からの継続的な需要や米国の実質金利の低下などを踏まえ、金に対する見通しを引き上げています。原油に対しては、景気後退リスクの低下、供給過剰に対する過度な懸念、キャリーが得られる可能性を背景に、足元の低価格から上昇余地があると見ており、逆張りの見方をとっています。
グローバル株式へのエクスポージャーを堅持:FRBが強い姿勢で利下げサイクルに踏み切ったことから、緩やかな経済成長とインフレ率の低下を特徴とするソフトランディングに関して確信度を強めています。バリュエーションは割高で政治的なノイズはあるものの、良好なファンダメンタルズと金融政策が企業業績を支えると予想していることから、リスク資産への配分を維持するべきと考えています。
株価上昇の裾野拡大を予想:コーポレート・ガバナンスの改善が企業業績を向上させると考えられ、強固な業績予想が既に米国市場に織り込まれていることから、日本株式に上昇余地があると見ています。米国株式は、超大型テクノロジー株以外の分野で業績見通しが改善し、バリュー株、小型株、一部のシクリカル銘柄に恩恵をもたらす可能性があると見ています。セクター別では、素材、生活必需品、コミュニケーションよりも金融、情報技術、公益事業、一般消費財・サービスを選好しています。
債券ではデュレーションよりクレジットを選好: 債券ではデュレーションよりクレジットを選好: タイトなスプレッドにもかかわらず、キャリー、強い需給要因、デフォルト率の低下を背景に、引き続きクレジットを選好しており、ハイイールド債のオーバーウエイトを選好しています。米国債利回りは3.25%~4.25%のレンジ内で推移すると考えています。
コモディティに小幅配分:来年にかけて金および原油の価格に上昇余地があると見ています。原油は景気後退懸念の低下と低い在庫水準から恩恵を受ける可能性があります。地政学的情勢、中国とインドにおける個人の需要、中央銀行による買い入れ、実質金利の低下が金価格をさらに押し上げる可能性があります。
ナネット・アブホフ・ジェイコブソン
スプリヤ・メノン
アレックス・キング