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ウェンディ・クロムウェル
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ウエリントン(以下、当社)は、2050年までの温暖化ガス排出量実質ゼロの実現に向けて、アセットオーナーであるお客様の脱炭素目標を支援しています。
競争力ある長期的な成果の達成が目標
当社は、お客様への卓越した資産運用の提供を追求し、優れた運用成果を提供することを目標に掲げています。ウッドウェル気候研究センターとの共同調査を通じて、気候変動の物理的影響が市場の予想よりも早く現れ、より破壊的になる可能性があることを認識しました。政策当局や市場がこのことを次第に認識し、対応を行うにつれ、低炭素経済への移行が特定のビジネスモデルを変える可能性があります。このため、企業レベルおよびポートフォリオレベルで移行リスクの管理を積極的に検討することが、より良い投資収益をお客様にもたらすことにつながると考えています。
気候変動の移行計画に関連して数多くの課題に直面する企業
企業が競争力を維持するためには、資産評価やリスク特性に影響を及ぼす可能性のある移行リスクへの対応が必要です。地域により、そして時間の経過とともに移行の進み具合は異なりますが、新たな規制や消費者の高排出企業離れにより、炭素税、訴訟費用、資本コスト、ビジネスの喪失などの費用が増加し、利益率が低下する可能性があります。当社は、低炭素社会への移行を受け入れる企業に対し資本の再配分を求めるステークホルダー(利害関係者)を惹きつける上で、信頼できる脱炭素戦略が役立つと考えます。
当社は、脱炭素化グライドパスの導入をご要望されたアセットオーナーのお客様向けに、2つの標準的アプローチを策定しました。一つは保有銘柄のトランジション・アライメントに基づくボトムアップ型グライドパス、もう一つはポートフォリオ全体の排出量フットプリントに基づくトップダウン型グライドパスです。個々の運用チームが選択するツールと計測方法は、お客様の目標や各チームの投資哲学、スタイル、時間軸、集中度、銘柄の回転率により決定されます。当社は、万能な指標はないことを認識しており、グライドパス導入ツールキットに追加できる他の指標についても評価を続けています。
ボトムアップ型グライドパス:ネットゼロに整合する発行体へのエクスポージャー拡大
お客様の目標:ネットゼロ整合企業に対するポートフォリオの投資比率を高める
当社運用チームは、特定のお客様の運用口座において、科学的根拠に基づく温室効果ガス排出量削減目標(SBT)を設定した企業への投資を増やすためのグライドパスを策定しています。
このアプローチは、科学に基づく目標設定イニシアチブ(SBTi)による金融機関のポートフォリオカバー率に関するガイダンスと一致しています。当社は現在、ポートフォリオ・エクスポージャーを計測する標準的指標として、SBTi承認目標を使用しています。目標評価に対する当社のアプローチは、独自のトランジション・アライメント評価を含め、データの入手可能性の向上とお客様の期待の変化に応じて進化する可能性があります。
図表1に示すグライドパスは、2019年のポートフォリオ基準値(またはそれ以降の開始日)を起点としており、SBTi承認目標を持つ企業に対する時価エクスポージャーを計測しています。これを基準に2030年の中間目標が設定されており、2040年にはSBTi承認目標または同等の目標を持つ企業へのポートフォリオ・エクスポージャーが100%になるように設計されています。このグライドパスは、科学的根拠に基づく目標を持つ企業へのエクスポージャーを2024年に100%にするという目標に沿っています。なお、対象投資先企業は2050年までのネットゼロ達成という最終的な脱炭素化目標に向けて取り組んでおり、ポートフォリオの脱炭素化の進展はそれに依存します。
図表1
一部の運用チームでは、中間目標に向けた進展を促すため、ポートフォリオのカーボンフットプリントへの寄与が最も高い企業とのエンゲージメントに重点を置いています。これにより、企業に気候変動の移行リスク管理のアプローチを開示し、科学的根拠に基づく温室効果ガス排出量削減目標を設定するよう奨励しています。ポートフォリオの加重平均炭素強度(WACI)の大部分を一部の保有銘柄が占めることが多いため、このアプローチはポートフォリオの脱炭素化と2050年までのネットゼロ達成目標との整合を図る上で有効です。一部のチームは、目標達成のため、既存のポートフォリオ保有銘柄の受容度に応じて、科学的根拠に基づく目標を持つ企業のポートフォリオ内の比重を高めています。
トップダウン型グライドパス:ポートフォリオにおける排出量フットプリントの削減
お客様の目標: 2030年までに温室効果ガス50%削減し、遅くとも2050年までにネットゼロ目標を達成し、ポートフォリオの排出量を削減する
図表2に示すグライドパスは、2019年の基準値(運用戦略の開始日がそれ以降の場合はそれ以降の開始日)を起点とし、ポートフォリオの投資可能ユニバースを表しています。これを基準に、2030年までの排出量削減目標50%と、2050年までのネットゼロ目標が設定されています。当社は、運用チームがモニタリングを行い、2030年の中間目標としてWACIを選定しました。これは、エネルギーや原材料の利用などを含む事業活動効率の企業比較に重点を置く当社のリサーチにWACIが適しているためです。しかし、方法論とデータの課題が解決されれば、ファイナンスド・エミッション原単位(現金を含む企業価値で求めた投資金額100万米ドル当たりの排出量のトン数)を指標として採用する可能性もあります。それまでは、両方の指標について報告いたします。
図表2
グライドパスを主要な投資目的の補完として採用する場合、運用チームはネットゼロへの対応を進める企業の進捗状況に応じて、建設的な対話とポートフォリオ構築を中心としたアプローチを取ります。進捗は前年と比べて必ずしも直線的ではありませんが、当社はグライドパスの進捗状況を報告し、直面する課題を積極的にお伝えすることをお約束します。
お客様の脱炭素目標を達成するために、運用チームは複数のツールを利用します。個々のポートフォリオ・マネジャーは、自身の投資哲学とプロセスに基づき、これらのツールをどの程度利用するか判断します。
建設的な対話
当社は、企業との建設的な対話が運用成果を向上させる強力なツールであると考えています。運用チームは、社内リサーチとツールを用いて、発行体の潜在的な財務的マテリアリティ(重要課題)を評価し、それに応じて対話を優先します。発行体にとって移行リスクの潜在的な財務的マテリアリティが高いと判断した場合、当社はそのリスクを明確にし、リスクの緩和策を提案します。この対話は、低炭素社会への移行が発行証券の評価に与える潜在的な影響を企業が認識するのに役立ちます。また、企業ミーティングは、運用担当者が企業における排出量フットプリントや移行リスク管理のアプローチへの理解を深める上でも有用です。
低炭素社会への移行に向けた企業の対応状況を深く理解するために、当社は企業に気候変動緩和策について尋ねることがあります。議論の範囲は企業によって異なり、以下のトピックが含まれます。
より多くの企業の経営陣が、長期的な成功に向けた移行リスク管理の重要性を認識することで、気候変動への対応が進んだ企業の投資ユニバースは拡大が見込まれます。これらの対話は、選択された形式で企業のさまざまな代表者と行われ、通常は複数年にわたり継続されます。
売却方針
当社では特定のセクター、業界、地域などのエクスクルージョン(投資除外)に関する義務付けはありません。お客様がポートフォリオからの除外を求めるエクスクルージョンは、ご要望に応じて実施されます。
しかし、時間の経過とともに、企業の長期的な競争力に関する運用チームの基本的な見解は、取締役会や経営陣との対話を通じて変化する可能性があります。このような評価の変更は、ポジションの縮小または解消につながる可能性があります(図表3)。売却の決定は一時的なものになることもあり、企業が投資可能ユニバースに留まり、リスク管理面で大きな進歩を見せた場合は、再投資の対象になることもあります。
図表3
気候変動対策のリーダー企業への投資
個々の運用チームは、ポートフォリオの保有銘柄を調整することがあります。運用チームは、その投資哲学とプロセスに従い、同業他社を上回る可能性がある気候変動の移行リスクに対応するリーダー企業への投資を増やすことがあります。これには、炭素効率が高くコスト優位性を持つ企業、顧客の排出量を削減する製品やサービスを提供する企業、または脱炭素化の進捗が市場で過小評価されている企業が含まれます。
気候ソリューションへの投資は、製品の削減貢献量の定量化が難しいため、大規模な計測が困難です。ユーティリティ企業や工業など気候変動緩和策を提供する企業は、製品使用による排出量が比較的少ないことから、スコープ1と2の排出量は多いものの、スコープ3の排出量は少ない傾向があります。スコープ3排出量の計測における現状の課題を考慮すると、これらのセクターに集中する運用戦略は、分散戦略と比較して排出量特性が高くなる傾向があります。このようなデータギャップや、カーボンフットプリントの削減を求める消費者からの声が強まる中、これらの企業は収益成長への追い風を過小評価されていると考えます。下流のスコープ3排出量の計測基準が策定されつつあり、これにより運用担当者やお客様が気候ソリューションへの需要を正確に評価できるようになるでしょう。
当社の気候リサーチ・チームは、企業レベルおよびポートフォリオレベルのモニタリングを容易にする独自のダッシュボードを開発しました。
将来の排出量削減は現在の排出量よりも重要
当社のデータセットには、報告排出量と推定排出量の両方が含まれていますが、企業の現在または過去の排出量よりも、将来の排出量削減へのコミットメントをより重視しています。これらの定量的指標に対する定性的な評価として、各社の脱炭素計画の信頼性を評価し、より広範な企業戦略や資本配分アプローチへの影響を検討しています。
現在および過去のデータ
将来予測データ
現時点でお客様のご要望に基づきグライドパスを採用できるのは、株式、投資適格債券、ハイイールド債券に投資する戦略のみとなっております。これらの資産クラスは、排出量データが入手可能であり、認証を受けた脱炭素化アプローチの導入が可能なためです。また、企業エクスポージャーが大きな構成要素となるマルチアセット口座についても、個別に検討いたします。当社は、より優れたデータと方法論が整い次第、対象となる戦略の範囲を順次拡大してまいります。
ネットゼロに関するグライドパス導入の詳細につきましては、お気軽にお問い合わせください。
ウェンディ・クロムウェル
ジュリー・デロンシャン