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ニック・サムイルハン
- マルチアセット・プラットフォーム共同ヘッド
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※下記コメントは2024年12月(米国時間)時点のものであり、将来予告なく変更される場合があります。
新型コロナウイルス感染症、インフレ上昇、景気後退の見通しに直面していた投資家にとって、この数年間は不透明な時期となりました。こうした環境では、債券や株式の潜在的なボラティリティを受け入れるよりも、高い利回りを生む現金という比較的安心感のある資産を保持する方が理にかなっていました。しかし、私たちはこの見通しが変わったと考えています。今後、回復力のある経済、成長への強固な見通し、リスク資産にとっての好環境が期待されるでしょう。米国と日本での最近の選挙結果や中国で景気刺激策が講じられる可能性は不透明さを和らげ、前向きな見通しを後押ししています。
見通しの変化は投資家にとって何を意味するのでしょうか。2025年に向けて3つの投資アイデアを探ります。
経済学者であるジョン・メイナード・ケインズの有名な言葉に、「事実が変われば、私は意見を変える」というものがあります。市場が景気後退を懸念し、金利が上昇していた時期には、現金を持つことが賢明でした。しかし、現在は景気後退への懸念がなくなり、金利は低下しています。事実が変わったのです。投資家は意見を変えたのでしょうか?
2025年は、投資家にとってポートフォリオがより明るい見通しを反映しているのかを評価する重要な年になると考えられます。ソフトランディングで景気後退が避けられるシナリオは、特に株式にとって好材料となる可能性があります。また、債券も依然として魅力的な投資対象です。質の高い債券は、利下げ局面では経済環境にかかわらず上昇する傾向があり、重要なリスク緩和要因となります。
図表1
利下げが株式と債券に及ぼす影響
出所:Refinitivのデータに基づきウエリントン・マネージメント作成。期間:1983年8月―2024年11月。利下げ後18か月で全米経済研究所(NBER)が定義する景気後退ありまたは景気後退なしのケースで、ゼロを基準として再設定した最初の利下げ前後の平均リターン。キャッシュ・リターンからの超過分。※上記は過去の実績であり、将来の運用成果・市場環境等を示唆・保証するものではありません。
主なポイント:投資家は、より明るい見通しに合わせてポートフォリオを再評価する時期に来ています。これは、現金から債券への移行、現金から債券と株式への移行、または債券ポートフォリオに株式を追加することなど、適切な水準の分散とリスク軽減を考慮しながら次のステップを踏むことを意味します。
ボラティリティと不透明感が続く中、すべての投資家が現金からのシフトを受け入れているわけではありません。既に現金から債券に資金を移している投資家は、現金を保持していた場合よりも高いリターンを得ている可能性があります。特に、最初の利下げ前に債券に投資していた場合はその傾向が顕著です。
しかし、まだ現金から移行していないとしても、債券の恩恵を享受するのは今からでも遅くはありません。金利の状況が変化した今、債券投資への追い風が吹いており、コア債券、とりわけ社債は、インカムと資本保護の両方の観点から魅力を増しています。
以下の図表が示すように、利上げ局面が終了した後は、歴史的に見て債券への投資配分が現金をアウトパフォームしています。その理由の一つは、現金を保有し続けることで投資家がデュレーション・リスクに晒されることにあります。金利が低下した場合、投資家はポートフォリオに一定のデュレーションを保つことで得られる追加的なリターンを失う可能性があります。また、利下げにより、現金を保有する投資家は再投資リスクにも晒されます。利回りが低下し始めると、現金を保有する投資家に適用される短期金利は徐々に低くなり、より長期にわたりより高い利回りを確保してきた債券投資家よりも不利な状況に陥ります。
図表2
最後の利上げを起点とした場合に現金リターンを上回る債券リターン
出所:Bloomberg Finance LLPのデータに基づきウエリントン・マネージメント作成。2023年7月27日時点。各データは各金融引き締めサイクルの最後の利上げから3年間の月次リターンの累計を示します。引き締めサイクルは以下の通りです:1983年3月-1984年8月、1988年3月-1989年5月、1994年2月-1995年2月、1999年6月-2000年5月、2004年6月-2006年6月、2015年12月-2018年12月。総合債券はBloomberg US Aggregate Total Return Index、社債はBloomberg US Corporate Total Return Index、米国債はBloomberg US Treasury Total Return Index、現金はICE BofA US 3-month Treasury Bill Indexを使用。追加情報は記事の最後に記載。※上記は過去の実績であり、将来の運用成果・市場環境等を示唆・保証するものではありません。
私たちは、2025年も債券が引き続き重要なテーマであると考えています。利回りの上昇は、債券が信用リスクやデュレーション・リスクを過剰に取ることなくインカムを得る機会を提供していることを意味します。トランプ氏の大統領就任による潜在的な影響、それが金利やインフレ、米国の財政赤字に及ぼす影響を市場が見極める中、金利のさらなる変動が見込まれます。
主なポイント:特に利回りが上昇する局面では、債券は引き続き魅力的です。柔軟な投資アプローチは、金利のボラティリティが高まる環境で特に有益であり、債券投資の機会を効果的に活用できます。
景気見通しの改善は、債券投資への配分を維持しつつ株式投資に動くきっかけになるのでしょうか。多少のボラティリティは依然として存在するものの、安定した経済成長、低い景気後退リスク、先進国市場で全体的にみられるインフレ低下は、企業の堅調な利益成長にとって好材料です。米連邦準備制度理事会(FRB)や中国人民銀行による最近の利下げに続き、今後12カ月で多くの中央銀行が金融政策を緩和すると予想され、これが株式にとってさらなる追い風となるでしょう。
市場のダイナミクスも変化し始めています。人工知能(AI)ブームで市場の集中が加速しましたが、最近は「マグニフィセント・セブン(米国主要テクノロジー企業7銘柄)」の影響力が緩和し始めており、今後一年間は他のセクターでも業績の伸びが拡大することが見込まれます。また、時間の経過と共に他のセクターや企業がAI技術を活用し始めるにつれて、AIの利点がより広く認識されるようになると予想しています。現在はより幅広い銘柄やセクターが市場をアウトパフォームしており、利下げと利回り低下がさらに多くの企業にとって追い風となると考えられます。
図表3
米国株式市場では業績の伸びがより広い範囲に拡大
出所:Bloomberg Finance LLPのデータに基づきウエリントン・マネージメント作成。2024年11月11日時点。データはS&P500およびS&P500テクノロジー&メディア指数内のEPS(1株当たり利益)の前年比変化(%)を示しています。2024年第1四半期以降のデータはコンセンサス予想です。※上記は過去の実績および将来の予測であり、将来の運用成果・市場環境等を示唆・保証するものではありません。
詳細なリサーチは、より多様な銘柄やセクターでアウトパフォームする銘柄を特定するうえで役立ちます。これにより、ばらつきはアクティブ運用にとってより有利な環境を生み出す可能性があります。しかし、ボラティリティと不確実性は依然として存在します。政治的混乱や地域紛争などのリスクは見通しを難しくするため、質を重視した分散投資とリスク管理が引き続き重要です。
主なポイント:経済成長がより広範に拡大することで、セクターや市場全体でファンダメンタルズが改善し、アクティブ運用の株式投資家にとって投資機会が生まれています。不安定な地政学的環境および市場環境において、質や安定性に焦点を当てたアプローチは、ダウンサイドリスクを最小限に抑えつつ、資本の価値上昇を促す一助となり得ます。
2025年に向けて、市場では楽観的な見方が広がっていると考えます。投資家もその見方に追随するべきでしょう。新たな経済局面には不確実な部分もありますが、今後の成長拡大による恩恵を享受するためには、ダウンサイドリスクの管理に細心の注意を払う必要があります。現金に頼りすぎるよりも、質の高い資産への分散や多角的な視点を取り入れたリサーチ重視の運用アプローチを活用し、ポートフォリオのレジリエンス(耐性・回復力)を強化することが重要です。
ニック・サムイルハン
ジェレミー・バターワース