-
マイケル・バリー
- 債券ポートフォリオ・マネジャー
Skip to main content
- 会社情報
- INSIGHTS コンテンツ
- 運用ソリューション
2022年12月中旬、ハイイールド債券運用戦略部門は、グローバル・ハイイールド債券市場の2023年から2024年上半期にかけての見通しを話し合うために集まりました。
2023年に入っても、マクロ経済に対する逆風が止むことはなく、デフォルト率は長期的平均に向けて上昇すると予想します。しかしながら、2022年とは異なり、ハイイールド債券のトータルリターンが再びマイナスになる可能性は低いと考えます。加えて、グローバル・ハイイールド債券のクレジット・スプレッドは今や500ベーシス・ポイント(bps)超に達し、「オールイン利回り」(債券発行時の国債利回り、スプレッド、発行価格のディスカウント、手数料等をすべて勘案」た利回り)は8.9%を超え、いずれも1年前の水準を大幅に上回ります。このスプレッドと利回りを捉えようとする投資家の動きによって、市場の需給要因は改善するとみています。
本稿執筆時点(2023年1月)では、幾分かディフェンシブなスタンスを選好しているものの、ハイイールド債券市場が転換点を迎え、ボラティリティが高まった場合に、割安なバリュエーションの投資機会を機動的に捉えるべく、柔軟性を保持しておくべきと考えます。2023年には、ハイイールド債券の発行体・セクター・格付け間のばらつきが拡大することで、銘柄選択の重要性も増すと予想します。従って、極めて高い競争力、もしくは、組織的なデレバレッジ(負債の削減)によって、厳しい市場環境下でもキャッシュフローを維持できる企業を引き続き重視します。
私たちの現時点での基本シナリオは、2023年下半期に向かって、世界経済が緩やかなリセッション(景気後退)に陥るというものです。ただし、異なるセクターが異なるタイミングで低迷する「ローリング・リセッション」のリスクが高まっているとの認識も持っています。このようなタイプのリセッションは、ハイイールド債券の多くにとって、より厳しい環境であり、強い逆風となります。
米FRBは過去1年間に、インフレを抑制するため、金融引き締めを強化しました。結果として、1980年代以降見られなかったような、米国債券イールドカーブの極端なフラット化が進みました。この現象は歴史的に、リセッションが迫っていることを告げるサインです。物価上昇率は最近鈍化していますが、インフレが落ち着くのか、あるいは、FRBがやむを得ず利上げを継続するのかは未だ不透明です。一方、プラス面として、消費動向が挙げられます。2022年は、信用増、余剰貯蓄の取り崩し、雇用増、住宅資産価値の上昇が揃って消費を押し上げました。こうした追い風は足元で弱まりつつありますが、金融引き締めの個人消費への累積効果が現れるのは2023年半ば以降であると考えます。
結論として、マクロ経済環境は引き続き厳しく、2023年の世界経済は減速が続くと予想します。
投入コストの上昇をよそに、ハイイールド債券の発行体は2022年には相対的に良好なファンダメンタルズを保ちました。コロナ禍が始まって以降、多くの企業はバランスシートの強化に努めてきたため、コスト上昇に対してある程度の抵抗力を持ちます。しかしながら、2023年に多くの企業の利益率は継続的に圧迫されると予想します。コスト上昇分を財布の紐を締めつつある消費者に転嫁することは容易なことではないからです。借入コストや資金調達コストが1年前から大幅に上昇しており、企業が生み出すフリーキャッシュフローを圧迫しています。
金融引き締め効果はタイムラグを伴って経済全体に波及するため、ハイイールド債券の発行体のファンダメンタルズは全般的に、今後6カ月から1年間で悪化すると予想します。
企業のファンダメンタルズは既に悪化傾向にありますが、ハイイールド債券のデフォルト発生率は抑制されており、格付機関のムーディーズによれば、過去1年間の平均デフォルト率は約2.5%です。
2023年のリセッションや企業利益率のさらなる低下を見込むものの、ハイイールド債券の年末までのデフォルト率は概ね4‐5%で推移すると予想しています。このデフォルト率は過去の平均と同程度で、前回リセッション時のピークを大幅に下回ります。上記のようなファンダメンタルズ面の問題は存在するものの、ほとんどのハイイールド債券の発行体は2023年を相対的に良好な状態でスタートしています。2024年末までに期限を迎える銘柄が限定的であることも、低いデフォルト率を予想する理由です。
グローバル・ハイイールド債券市場のスプレッドとオールイン利回りの両方が今や、2022年初めの水準から大幅に上昇しています。2022年12月31日時点で、ICEバンクオブアメリカ・グローバル・ハイイールド・コンストレインド指数のオプション調整後スプレッドは515bpsと、過去実績の中央値をわずかに上回る水準にあります(53分位)。加えて、同指数の最低利回りは8.9%超であり、平均ドル価格は85ドルです。
2023年を通じて、市場のボラティリティは高いままであるかもしれませんが、特段の悪材料が発生しなければ、新規発行の減少や本年上半期中のFRBによる利上げ停止の観測を支援に、ハイイールド債券のスプレッドは縮小する可能性があります。しかし、景気減速による企業ファンダメンタルズの悪化を受けて、下半期にはスプレッドが再び拡大するかもしれません。その場合は、ハイイールド債券の買いの好機が出現することになるでしょう。
2023年の投資戦略としては、リスクに対して幾分かディフェンシブな姿勢を取り、銘柄選択を最重視すべきと考えます。ハイイールド債券セクターについて、マクロ経済面の逆風、発行体のファンダメンタルズの悪化、過去実績の中央値近辺にあるバリュエーションを踏まえ、現時点では、そのクレジット・リスクに見合う投資収益をもたらす可能性は低いとみています。しかしながら、ハイイールド債券市場のボラティティが一層高まった場合に備え、柔軟な姿勢を保持しておくべきでしょう。そうすることで、市場の転換点を捉え、割安なバリュエーションでの投資機会を利用することができると考えます。
マイケル・バリー
マイケル・ホン
コンスタンティン・レイドマン
リズ・ショートスリーブ
クリストファー・ジョーンズ