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ジーン・ハインズ
- 最高経営責任者(CEO)
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近年のヘルスケア・サービスや医療技術、医薬品の発展と、自動化、デジタル化、ロボット工学への関心の高まりが相まって、今後数年にわたりヘルスケア市場が輝きを増す土台が整いつつあります。同セクターでは現在、長期的に魅力的な投資機会につながるイノベーションやトレンドが複数みられます。
ヘルスケア・セクターには、医療技術や医療機器、医薬品、ヘルスケア・サービスなどが含まれます。これらの分野は、さらに細かく分類できます。例えばヘルスケア・サービスは、民間の医療保険会社と医療機関をつなぐマネージドケア事業、ヘルスケア・ソフトウェア、薬局、病院など、複数のニッチなサブセクターを指しています。
ヘルスケアは、ディフェンシブ性(守り)とオフェンシブ性(攻め)を併せ持つ、広範で多様な市場です。ヘルスケア分野の企業、製品、サービスの多様性こそ、同セクターが過去堅調なパフォーマンスを示してきた要因の一つであり、私たちが将来的に同市場を楽観視している理由です。
ヘルスケア市場を楽観視している理由の一つがイノベーションです。研究開発力、生産力ともに向上しています。その証拠が、ファースト・イン・クラス(医薬品の中でも最初に認可された新薬)の画期的な医薬品です。
ヘルスケア・セクターの生産力は、創薬や医薬品開発の効率化により、増加傾向にあります。機械学習や構造生物学研究のツールは、新薬の初期開発の時間短縮に貢献しています。臨床開発もスピードアップし、業界関係者の意思決定が改善されました。また、アンメット・メディカル・ニーズ(医療分野の満たされていないニーズ)の高い特定の疾患については、治療薬の承認までの期間が短縮されました。
さらに、遺伝子治療、遺伝子編集、RNA技術を含む遺伝子医学は、より効果的な医薬品開発をはじめ、あらゆる可能性の扉を開く新しいプラットフォームです。これに加え、自動化、ロボット工学、デジタル化の進歩により、今後何年にもわたるイノベーションが可能と考えます。これらの開発プロセスの改善により、糖尿病と肥満症、アルツハイマー病、心臓病という3つの重要な医療ニーズに対して、画期的な新薬、治療法、研究法が生まれました。
この1年間に、肥満症や糖尿病の治療薬として、体重を20%程度まで安全に減量できる新しい注射剤が承認されました。この画期的な新薬は、製薬業界における長期にわたる収益性を示唆しています。将来的にさらに大きな収益が見込めるのは同じ効果が期待できる経口剤です。現在、この注射剤の需要と供給には大きなミスマッチが起きています。患者は使い捨てタイプのペン型注入器を毎週使用していますが、この注射剤を必要とする患者が多く、需要を満たすためいかに供給を拡大するかが課題となっています。経口剤は複雑な生産上の課題はあるものの、より効果的に市場を切り開いていく糸口となるでしょう。
糖尿病や肥満症の治療の進歩は、薬だけにとどまりません。インスリンを調節するインスリンポンプも改良されました。血糖センサーの測定に基づきインスリン投与量をコントロールするアルゴリズムを搭載した端末と持続血糖測定器との相互作用も可能になりました。
アルツハイマー病の治療に役立つ初の重要な疾患修飾薬が承認されました。この治療薬は、早期アルツハイマー病患者の脳内から有毒なタンパク質であるアミロイドベータのプラークを取り除くことで疾患の進行を遅らせます。これは、アルツハイマー病治療薬の将来にとって重要な前進と捉えています。現在臨床開発中の疾患修飾薬は他にもあり、これらはアルツハイマー病患者の満たされていない医療ニーズの解決に向けて大きな役割を果たすと考えられます。
心臓病の治療薬でもイノベーションが起きています。希少な心血管疾患に対する画期的な治療薬が登場したほか、10年ぶりにコレステロールを下げる薬や高血圧を治療する薬が改良されました。
治療薬だけでなく、手術の可能性も広がりました。最近では、心臓弁の修復(弁形成)や取り換え(弁置換)に驚くほどの進歩がみられます。大動脈弁置換術は二尖弁をはじめ、少なくとも今後5~10年はさらなる進展が見込まれます。
画期的な新薬がより広く使用されるようになる中、私たちはそれらの長期的な影響を見守りつつ、保険会社の動向も注視しています。例えば現在、米国の高齢者向け公的医療保険「メディケア」や一部の民間保険会社も、肥満症治療薬をカバーしていません。こうした状況は政策が変わらない限り、新薬による収益成長を阻害する可能性があります。
私たちは、これらの新しいイノベーションを鑑み、ヘルスケア市場の潜在成長力について引き続き楽観視しており、魅力的な投資収益の源泉になっていくと考えます。
新型コロナウイルスのヘルスケア・セクターへの影響は専門分野によって異なる結果をもたらしました。例えばヘルスケア・サービス分野では、病院や透析関連企業、その他施設などが大きな打撃を受けました。一方、マネージドケア事業者はコロナ禍を通じて底堅さを発揮しました。医療技術分野では治療薬の開発や研究を行うライフサイエンスツール関連企業が、新型コロナウイルスの治療薬やワクチンの開発を推進しました。一方、医療機器関連企業にとって、コロナ禍(2020年・2021年)での待機的手術の休止やサプライチェーン(供給網)の混乱が重荷となりました。
しかし、ヘルスケア・サービスおよび技術のいずれの分野も、コロナ禍による打撃を乗り越え、足元ではほぼ平常に戻りつつあります。依然としてインフレ懸念が残るものの、診療件数はコロナ禍以前の水準に戻り、サプライチェーンの混乱は緩和されつつあります。潮目が好転し始めていることは、企業の利益と売上高の向上にとって好材料であり、マルチプル(株価収益率)と業績予想の上振れにつながる可能性があります。
コロナ禍は感染症対策がいかに世界的に遅れていたかを露呈させました。その結果、感染症予防や治療に多くの資金が投入され、ヘルスケア・セクター全体を下支えしています。
現在のヘルスケア・サービスの料金制度は、より良い(質)サービスではなく、より多く(量)のサービスの提供にインセンティブを与えています。技術の進歩により、最近この制度に対する改善の兆しが見え始めました。特に改善を牽引しているのはマネージドケア事業者です。
この他にも、技術の進歩による恩恵が期待できる分野として、診察予約などのバーチャルサービスを提供する企業や、医療・健康・介護の技術革新「デジタルヘルス」を手掛ける企業が挙げられます。
画期的な新薬などのイノベーション、コロナ禍からの回復、技術の進歩などのトレンドは、ヘルスケア市場の長期的な投資機会を創出し、魅力的な投資収益の向上につながっていくでしょう。
ジーン・ハインズ
アン・ガロ
レベッカ・サイクス