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アンドリュー・ハイスケル
- エクイティ・ストラテジスト
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※下記コメントは2023年12月(米国時間)時点のものであり、将来予告なく変更される場合があります。
2023年、市場はもともとポジショニングに慎重でしたが、予想を上回る経済指標や企業収益、消費の持続的な回復、政府による景気支援の財政フローなどを受けて株価は上昇しました。来たる2024年、グローバル株式のリスク・リターンは比較的均衡すると見ています。私たちは現在、クオリティの高いコンパウンダー企業と並行して、割安でマクロ経済や金利により敏感なセクター・地域にも分散投資をするバーベル・アプローチが魅力的であると考えています。本稿では、現在進行中の新たな投資レジームへの移行に関する見通しと、今後1年間にグローバル株式のパフォーマンスに最も大きな影響を与えると予想される市場セグメントについて論じます。
米国
均等加重した米国株式のバリュエーションはそれほどストレッチしていませんが、超大型テクノロジー株については妥当な水準にあるようです。これは、米国の指数が現在、ハイテク株優位である点を考慮すると、市場の地合いが金利主導のリスクオフ(回避)に転じた場合に重要なリスクとなります。図表1の通り、S&P500指数の集中度は1970年代以降で最も高まっています。2024年に上昇の余地がある市場セグメントといえば小型株でしょう。ここのところアンダーパフォーマンスが続きましたが、経済が安定し金利とインフレが落ち着けば、小型株は注目に値します。小型株は現在、特に米国において大型株に比べ極端に割安な価格で売買されています。
図表1
米国株式市場での極端な集中度がリスクと機会をもたらす可能性
出所:ブルームバーグのデータに基づきウエリントン・マネージメント作成。2023年7月31日時点。S&P500指数の集中度はスタンダードのハーフィンダール・ハーシュマン指数(HHI)を使用。※上記は過去の実績であり、将来の運用成果・市場環境等を示唆・保証するものではありません。
株式市場のパフォーマンスは過去1年間、他の地域に比較してより広範囲で国内のファンダメンタルズに下支えられました。こうした状況を背景に、日本株式は、特にバリュエーションの低下とコーポレート・ガバナンス改革の継続を考慮すると、引き続き米国株式に比べ相対的に魅力的であると見ています(図表2)。
欧州
欧州株式は2023年、米国株式には及ばないものの、均等加重ではアウトパフォームし、思いのほか堅調に推移しました。図表2が示すように、欧州株式は2024年も米国株式に比べ、セクター調整後も非常に割安に見えます。欧州の一部地域がすでにリセッションに陥っているとの見方もありますが、これは成長予測とセンチメントにも反映されています。2024年には、財政状況が予想を上回る可能性があります。その場合、米国株式に対する欧州株式のアウトパフォーマンスは年間を通して継続するかもしれません。バリュエーションが魅力的なほか、株主還元(配当利回りと自社株買戻し)も現在、米国株式以上の水準にあります。また、欧州企業は自動化やエネルギー移行など、いくつかの重要なグローバルトレンドに大きなエクスポージャーを有しています。欧州の銀行も、収益の回復(黒字転換)や好調なストレステストの結果、規制上の逆風の緩和がバリュエーションにまだ織り込まれていないため、依然として魅力的に見えます。総合的に見て、私たちは欧州株式の前向きな中期的見通しを維持しています。
英国
インフレと利上げ観測の急速な高まりに押されて、英国株式は現在、世界で最も割安な水準にあります(図表2)。リスク・リターンは現状、高水準にありますが、投資家の景気に対する不安が和らげば、短期的には上昇に転じる可能性もあるでしょう。
図表2
依然として大きいバリュエーションの地域別格差
MSCIの地域別、過去20年間の12カ月先予想PER(株価収益率)
出所:MSCIのデータに基づきウエリントン・マネージメント作成。2023年12月時点。※上記は過去の実績であり、将来の運用成果・市場環境等を示唆・保証するものではありません。
中国
2022年後半にコロナ禍からの復興に沸いたものの、景気回復の鈍さ、不動産市場への懸念、そしてバリュエーションの圧縮により、中国株式のパフォーマンスは大幅に低下しました。英国と同様にリスク・リターンは高い水準にありますが、投資家心理が落ち込んでいるため、幾分均衡しています。中国の経済および・地政学的リスクを考慮すると、他の地域より高い株式割引率は妥当であると見ています。
新興国市場(中国を除く)
新興国市場は先進国市場と比べどちらかといえばアンダーパフォーマンスが15年間続きましたが、私たちは新興国市場全体を注目すべきだと見ています。新興国市場は歴史的に見て、米国主導の先進国市場におけるリセッション後の初期のサイクルで最高のパフォーマンスを発揮してきました。中国が2024年も引き続き新興国株式のパフォーマンスを妨げる可能性はありますが、EM指数の優位性を考慮すると、比較的低インフレで、ファンダメンタルズは改善し、バリュエーションは低く、市場非効率性が高いことから、アクティブ運用者にとって新興国株式は魅力的と言えるでしょう。
2024年は、インフレが長引き、成長は緩やかになり、中央銀行は景気拡大を支援するか物価上昇を抑制するかの選択を迫られるでしょう。このトレードオフにより、景気の循環サイクルは短く頻繁になり、地域間で同期することは減るでしょう。その結果、グローバル株式はボラティリティが高まり、格差が広がると予想します。
市場はこのリスクについて楽観的過ぎるように見えますが、これは驚くべきことではありません。世界経済は1996年以降その約75%の期間、安定成長と低金利・ディスインフレーションを特徴とする「ゴルディロックス(適温経済)」シナリオの恩恵を受けてきました(コロナ不況と2022年のインフレは直近の特筆すべき例外です)。リスク資産は2023年、緩やかながらプラスの経済成長と、インフレの減速または後退を受けて、過熱も冷え込みもないレジームへの回帰に対する期待感から急騰したようです。先進国の中央銀行が現在のインフレ目標2%を緩めるのか、それとも追加利上げを実施してリセッションや金融システム不安を引き起こすリスクを取るのか、まだわかりません。そのため、グローバル株式の潜在的成果は多岐にわたるでしょう。
2024年、私たちは以下を予想します。
市場とマクロ経済の先行きに不透明感が広がる中、私たちが主に検討すべき点は以下の通りであると考えます。
私は、市場レジームの転換は明らかに進行中であると考えています。2024年を見据えると、経済は小幅ながら着実に成長し、インフレ率も2024年に向けて抑制されつつあります。私の予想では、米株式市場の集中度は広がり、景気循環のボラティリティと格差は高まってアクティブ運用者がアルファを生む機会が増えるでしょう。地域ごとの時価総額バリュエーションのずれ(乖離)も、上値を追うためのロードマップの可能性を示しています。日本株式、欧州株式、新興国株式、またマクロ経済や金利に敏感なセグメントとセクターも魅力的です。世界経済が「ゴルディロックス」環境に逆戻りしつつあり、2024年は株式市場全体にとって良い年になるのではないかと私は楽観視しています。
アンドリュー・ハイスケル