グローバル・インパクト・レポート(株式戦略)

2027-11-20
アーカイブ info
アーカイブの記事内の作成者の見解は、過去の作成時点の情報に基づくことをご留意ください。
1362911259

ウエリントン(以下、当社)のグローバル・インパクト運用戦略に関する第8回アニュアルレポートをお届けします。不透明な世界情勢を背景に、インパクト投資の必要性が引き続き高まっています。2023年には気候変動が深刻化する中、当社は急速に拡大しつつある長期トレンドである脱炭素化に向けた投資に弾みをつけました。また、食料不安の高まりが「持続的農業と栄養支援」におけるイノベーション(革新)に対する需要を牽引しています。さらに、デジタル通信ソリューションやその他の重要なインフラ需要(特に水道)に対して投入される資本が急増しています。インパクト投資テーマへの投資支出は今後も続くとみられ、長期的な成長機会が拡大することで、当社はお客様にとって魅力的なリターンの創出を追求できるでしょう。

2023年も気候変動が依然として主な焦点となりました。当社の気候リサーチ・チームがウッドウェル気候研究センター(以下、ウッドウェル)や米国マサチューセッツ工科大学「地球規模の変化に対する科学と政策のジョイントプログラム」(以下、MITジョイントプログラム)の気候科学者と実施している共同調査によれば、気候変動の有害でコストのかかる影響から社会を守るためには、レジリエンス(耐性・回復力)と緩和策の両方を強化することが急務となっています。マクロ経済の逆風が続いていたにもかかわらず、資源の効率化を目的とした支出が2023年も底堅く推移したのは喜ばしいことです。

別の重点分野では、特に農村地域のデジタル格差の拡大に対処する技術への長期的需要の大幅な増加が引き続き予想されます。歴史的に見ると、米国の営利教育企業のような「教育と職業訓練」に関連するセグメントは、景気後退環境でディフェンシブな特性を発揮してきました。新型コロナウイルス禍以降の数年間には、企業が統合された教育サービス提供ソリューションに投資するのに伴い、この投資テーマにおける技術進歩が加速しています。

最近ニュースを賑わせている企業に対するデータ侵害事件の数や現在進行中の地政学的緊張を踏まえると、サイバーセキュリティ対策が引き続き最優先課題となっています。医療も依然として重要な投資テーマであり、当社はアクセス格差や制度的非効率性の解消に貢献するインパクト企業の発掘を続けています。こうした企業の多くは、魅力的なビジネスモデルと斬新な科学的・臨床的アプローチを利用したソリューションを組み合わせています。

これまでと同様、私たちのグローバル・インパクト運用戦略では、「重要性」、「追加的効果」、「定量化」の3つの厳格な基準で、投資候補銘柄を選定しています。さらに、投資先企業には、地球環境問題や社会的課題へのプラスの影響(インパクト)を計測・評価する成果指標(KPI)を設定することを、企業エンゲージメントを通じて働きかけています。必要に応じて、当社の他の運用チームと緊密に連携し、エンゲージメントの範囲を拡大しています。人と地球の利益につながるソリューションへの社会の理解が進み、企業がイノベーションを創出することで、インパクト投資の市場は今後さらに拡大していくでしょう。私たちは引き続き独自の11の投資テーマを通じて、それらの企業への投資機会を追求し、魅力的な投資リターンを提供できるよう努めてまいります。

日頃より当社並びにグローバル・インパクト運用戦略に多大なご支援を賜り、誠にありがとうございます。皆様の信頼があってこそ、インパクト投資はここまで成長することができました。これからも、私たちは地球環境と社会の課題解決に取り組み、企業価値向上につなげているインパクト企業に投資することで、長期にわたる社会経済的な利益と投資収益の成長を目指してまいります。

goins-jason-4483-u648

ジェーソン・ゴインズ

株式ポートフォリオ・マネジャー