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ヨランダ・コーティンス
- 株式ポートフォリオ・マネジャー
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コーティンス:ESGに該当する企業の競争優位の源泉は、過少評価されているものが多いと思います。地球環境問題や社会的課題に対する適切な取り組みは、企業のブランドや評判を高めることができ、それが株価に織り込まれることが見込まれます。リサイクル可能な包装や責任ある調達は、店頭価格に直接影響を与えるものではないかもしれませんが、顧客獲得の後押しとなり、将来的に価格競争力に寄与する可能性があります。また、例えばインドで人材の離職が増加しているコンサルティング業界で、もしある企業が人材の確保に成功し、離職率を抑えることができれば、競争力を獲得することができるかもしれません。あるいは製薬業界では、短期的なリターンよりも研究開発に力を入れることで、将来のキャッシュフローに対する信頼を得ることができるかもしれません。規制や政府の監視が強化され、世界中で起きていることを瞬時に把握できるデジタル時代において、私たちはESGの課題にしっかりと向き合い、企業価値に関わるあらゆることに目を向ける必要があります。
コーティンス:地球は一つしかなく、持続可能な未来のためには、天然資源の責任ある利用が重要です。水や空気など、一定の価格が設定されていない資源も多くあります。企業が再生不可能な天然資源の保護に取り組まなければ、将来的に自社の投入コストが増加すると同時に、資源は枯渇していきます。工場で使用する水の再利用から、リサイクル可能な歯磨き粉チューブの生産、バイオ燃料への投資まで、自然資本の保護を目指す取り組みは、魅力的な利益を生み出していくでしょう。
コーティンス:企業のスチュワードシップ責任に明確で普遍的な定義はありません。ただし、企業が長期的な視点に立ち、次世代のために価値を維持し向上させていくことが核となっています。卓越したスチュワードシップ責任は、優れた経営陣の存在が起点になっています。私たちは、挑戦を後押しし、曲がり角の先を見通すことのできる、権限のある独立した取締役会を望んでいます。また、取締役会がCEO(最高経営責任者)よりも任期が長いことも重要です。取締役会は企業がスチュワードシップ責任を果たすうえで中枢となる管理機能です。すべてのステークホルダーのニーズをバランスよく対応するために資本配分を決定する権限をもっています。企業の規模が大きくなるほど、社会的な資格が必要になります。それには、ステークホルダー主義の姿勢と長期的な視点が鍵となります。スチュワードシップ責任の資質は、自社の利益を維持し、適応力を高め、業績の振れ幅を抑えるために役立っていくと考えます。
コーティンス:企業のスチュワードシップ責任は、自社のステークホルダーに配慮する姿勢を意味します。同じように私たち投資家は、顧客の資産に対する受託者責任を負っています。私たち議決権行使や投資先企業とのエンゲージメントを通じて、企業のスチュワードシップ責任を促すことができます。例えば、私たちは、より権限のある取締役会の推進に向けて、投資先企業の取締役会の議長職とCEOの分離を求めることができます。利害が一致しない役員報酬案に反対票を投じることもあります。投資先企業の経営陣に対して、自社の内側を俯瞰するよう求めることができるのです。サプライチェーンの監査や人権状況把握に関する株主提案を支持した例もあります。エンゲージメントと合わせて、これらは投資先企業のガバナンスと監督の改善に影響を与え、推進していくために役立ちます。
コーティンス: 今日、企業のサプライチェーンは過去に比べて非常に拡大しています。企業はティア2とティア3のサプライヤーまで把握する必要があります。原材料の調達先の末端に近づくほど、現代奴隷制のリスクは高くなります。リスクを認識し、調査などに頼るだけでなく、現地で適切な評価を行うことが鍵です。もし企業が「現代奴隷制の証拠はない」と主張した場合、それは逆に警告サインだと考えます。現代奴隷制の問題を把握し、それに対する是正措置を説明することの方が重要です。これは自社の強いレジリエンス(耐性・回復力)を示すことにつながるからです。
コーティンス: 労働条件に注目しています。デジタル化が進むほど労働力に対する要求も高くなり、人材を適正に管理・育成しなければなりません。また、生物多様性にも着目しています。地球環境の次ぎ、林業、水、再生可能な農業の実践に対して焦点を当てる必要があるでしょう。 企業が優位に立つためには、フロントランナーになる必要があります。規制が導入される前に、基準を自ら策定する――。規制がつくられてしまうと、企業は迅速に適応せざるを得なくなり、自社の財務の重荷となり、株価にも影響を与えかねません。
ヨランダ・コーティンス