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ジョン・バトラー
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※下記コメントは2023年10月(米国時間)時点のものであり、将来予告なく変更される場合があります。
世界経済の相関関係は数十年にわたりますます緊密になっていましたが、私たちの研究によると、世界経済は新たな、より不安定なレジーム(環境)に突入し、各国間の乖離は次第に大きくなっています。こうしたグローバル化からの脱却は否定的な見方も多いですが、資産配分の観点からすると、より微妙なニュアンスのアプローチが適切だと考えます。本稿では、各国間の乖離を大きくしているマクロ情勢を考察し、それがポートフォリオにもたらす重要な影響をご紹介します。
大局的な観点で見ると、新たなレジームは構造的な高インフレ、景気サイクルの短期化と不安定化、雇用可能な労働力の減少、そして世界的な供給ラインの分断が伴い、地政学的な対立の激化と気候変動がこれらのすべてを助長しています。そして、グローバル化によって各国間の所得格差は縮小した一方、各国内の所得格差が拡大しました。現在、グローバル化が進んだ世界に関するコンセンサスに公然と疑問が投げかけられています。貿易規制が急速に増える中で(図表1)、各国政府は自国の需要と、エネルギー転換や技術などの重要産業を支援する政策を追求するようになり、各国間の乖離はさらに加速しています。各国の景気サイクルと政府方針の推移に一致して、各中央銀行の政策も乖離する可能性が高いとみています。
図表1
世界の貿易規制は増加傾向
出所:グローバル・トレード・アラート1のデータに基づきウエリントン・マネージメント作成。2023年10月13日時点。※上記は過去の実績および将来の予測であり、将来の運用成果・市場環境等を示唆・保証するものではありません。
それにも関わらず、市場は依然として、経済の収束と米連邦準備制度(FED)を筆頭に各国中央銀行が引き締め政策を継続することを織り込んでいます。FEDが引き続き利上げとその後の利下げサイクルを主導し、他の中央銀行は程度の差こそあれ、遅れてそれに追随する一方、日銀は政策据え置きを継続すると市場はみているようです(図表2)。これが1998年以降の傾向であり、市場は今後もその傾向は続くと考えています。
図表2
政策金利と市場の期待
出所:リフィニティブ・データストリーム2のデータに基づきウエリントン・マネージメント作成。2023年9月29日時点。点線は市場予想に基づく予測。※上記は過去の実績および将来の予測であり、将来の運用成果・市場環境等を示唆・保証するものではありません。
市場がFED主導による各国政策の収束を確信し続けている理由は、以下の3つの要因が考えられます。
1990年代後半までの時代、とりわけ1970年代と1980年代には、国ごとに独自の内需サイクルがあり、実質と名目成長率は国によって大きく異なり、実質と名目の個人消費に大きな異常値はありませんでした。時には、財政政策と金融政策の方向性も大きく異なり、ある程度の差がありました。
確立されたパラダイムがシフトするには時間がかかりますが、私たちの研究によれば、世界はこうした過去の環境に戻りつつある可能性が高いです。これに関して注目すべき重要な動向は以下の通りです。
すでに、これらの地域では製造業ではなくサービス業が成長を牽引しており、私たちが考えるように、内需の見通しが実現すれば、各国の経済と市場価格との相互作用は変化し、長期金利と幅広い資産に大きな影響が及ぶでしょう。
資産配分の観点からすると、ボラティリティの上昇と地域ごとのばらつきは複数の影響をもたらしていますが、これらはすべてネガティブな影響という訳ではありません。ボラティリティは高リスクを伴う一方で機会をもたらすため、資産配分に際しては、ポートフォリオへのアプローチをどう順応させるか慎重に考える必要があります。
バランスシートのプラス面として、乖離するレジームは以下をもたらす可能性があります。
マイナス面としては、相関の低下と引き換えに以下の問題が生じる可能性があります。
この新たなレジームで成功するためには、私たちは上述のリスクと機会を念頭に、極めて慎重かつ体系的にポートフォリオを構築する必要があると考えます。具体的には、以下の内容が挙げられます。
私たちは独自の調査に基づき、世界のマクロ経済が乖離するレジームに戻りつつあると考えます。私たちはそうした事態に備えて、上述の事項を踏まえて資産配分を調整する必要があると考えます。
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