2025年CEO年頭挨拶
アクティブ運用の未来を切り拓く

2025年1月
2026-01-01
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ウエリントンの創業者たちが、現在もなお会社の指針となっている原則や価値観を確立してから、約1世紀が経ちました。こうした原則や価値観はいずれも重要なものですが、私たちがよく「Client, Firm, Self(お客様の利益は会社、自己の利益に優先する)」と言うように、創業者たちが残した最も素晴らしい遺産は、お客様をすべての活動の中心に据える姿勢でしょう。

このコミットメントは、会社が成長していく過程であらゆる決定の指針となってきました。お客様のニーズが変われば、私たちもそれに適応し、進化します。米国外での投資や顧客サービスを開始した1960年代、会社を非公開化した1970年代、会社初のヘッジファンドを立ち上げた1990年代、債券運用を強化した2000年代、会社初のプライベート・エクイティ運用戦略を立ち上げた2010年代がまさにそうでした。

私たちは今、お客様とその受益者にサービスを提供する次の100年を見据え、アクティブ運用の未来の構築という、新たな一歩を踏み出しました。なぜ変化が必要なのか、私たちはどのようにその変化を実現し、加速させているのか、そして次に何が起こるのかについて、ウエリントンの考えをいくつかご報告いたします。

資産運用に対する期待の変化

この1年、私はロンドン、ドバイ、シドニー、カリフォルニアなど、世界中のお客様とお会いする機会に恵まれ、それぞれの目標や課題について直接お話を伺いました。お客様が資産運用会社に求め、期待するものは変化しており、多くの点で資産運用の形を作り変えています。

  • アセットアロケーション(資産配分)の調整 — アセットオーナーは引き続き、アルファ創出の可能性が最も高いとみられる分野に重点を置いてアクティブ運用を利用しています。例えば、アルファの高いファンダメンタル戦略、プライベート投資、ヘッジファンドへの需要は旺盛で、拡大しています。Preqin(プレキン)のデータによると、オルタナティブ業界全体の運用資産残高(AUM)は2029年まで年10%のペースで増加する見通しです。
  • 公開市場とプライベート(非公開)市場の境界線の曖昧化 — 20年前には、公開企業の数は非公開企業の数を約5対1で上回っていました。現在では、非公開企業の数は公開企業の2倍以上に上ります。これは、アセットオーナーが公開市場とプライベート市場をより総合的に、すなわち投資機会の統合された「エコシステム」として捉える必要があることを示しています。債券市場も同様に、規制上の制約のために銀行が融資を敬遠し、プライベート・クレジット市場の目覚ましい成長に拍車がかかっています。投資適格クレジットの分野では、アセットオーナーは公開市場とプライベート市場の両方から最良の投資アイデアを集める手助けをますます求めるようになっています。
  • ソリューション重視 — 一部のアセットオーナーは独自のリターン、リスク、コスト目標を実現するために、幅広い運用力を持ち、多様な資産クラスについてアドバイス、ソートパートナーシップ(考えや経験を共有すること)、ソリューション、サポートを提供できる少数の運用会社との協働関係を深めようとしています。
  • グローバル・ウェルス・チャネル(富裕層)のニーズ拡大 — 私がこの1年に話をした多くのお客様は、世界中の年金基金が自己責任型の確定拠出年金制度に移行し、個人が自らの資産を増やす中、グローバル・ウェルス・チャネル向けのソリューションについて検討していました。例えば、富裕層においては、他の長期志向の投資家と比べてオルタナティブ資産への配分が著しく少ないため、オルタナティブ資産へのエクスポージャーを増やすことに焦点が当てられています。
  • 技術革新 — 人工知能(AI)をはじめとする技術進歩は資産運用業界を根本的に変えつつあり、投資アイデアの創出、ポートフォリオ構築、リスク管理、顧客エンゲージメントを向上させる機会を生み出しています。

こうしたトレンドの多くは何年も前から進行していましたが、今後も加速し続けるとみられます。これは、アクティブ運用に従来とは非常に異なるエキサイティングな未来が待ち受けていることを示唆しています。そして、現時点でアクティブ運用に積極的に適応させている運用会社こそが、お客様の目標達成を支援する最も優れた態勢を整えられるでしょう。

私たちの取り組み

私たちは運用力の向上に向けて投資し、組織と人材をお客様の変化するニーズに適応させています。また、事業を拡大し、すべての資産クラスにまたがる運用力を備えたグローバルな大手資産運用会社であることのメリットを享受するのに必要なインフラ、テクノロジー、プロセスの構築を続けています。これまでの進化の時期に指針となった同じマインドセット(思考様式)で、こうしたすべての変化に取り組んでいます。私たちは「我が道を行く」必要があります。つまり、誰かの真似をしようとするのではなく、独自の強みを活かすのです。

現在進行中の主な動きをいくつかご紹介します。

  • 公開株式と債券 — アクティブ運用のハードルは高くなっており、私たちは運用担当者がお客様のために魅力的なリターンを生み出せるよう、さまざまな方法でサポートしています。運用チームに不可欠なスキルを強化する目的でコーチングやトレーニングをさらに充実させているほか、運用エクセレンス・チームの編成を進めています。このチームは、テクノロジーやリスク・ツールを用いて運用プロセスを改善し、アルファ創出機会の拡大を支援します。加えて、科学とファンダメンタル分析の本格的な融合にも引き続き取り組んでおり、クオンツ・リサーチやAI技術を駆使し、運用担当者がトレンドをいち早く特定したり、投資先企業から得た情報を検証したりするのに利用できる独自の指標を作成しています。さらに、AIツールを用いてリサーチを統合し、生成AIチャット機能を提供することで、運用担当者が運用プラットフォーム全体の集合知を利用して質問に答えられるようにしています。

    金利環境が変化する中、私たちはコアプラス、中期信用、証券化資産、マルチセクター・クレジット、リスク削減戦略、ローテーション戦略など、幅広い投資機会にまたがるお客様の債券投資のニーズに取り組んでいます。株式については、株式市場の集中度の高まり(「マグニフィセント・セブン」)に対処するため、拡張(140/40)戦略から「インデックス補完」アプローチに至るまで、潜在的なソリューションを検討しています。さらに、小型株など、「マグニフィセント・セブン」時代には見過ごされてきたものの、アルファが高くなり得る分野での投資機会に注目しています。

    また、ファンド、上場投資信託(ETF)、個別管理勘定、モデル・ポートフォリオなど、お客様のニーズに最も適したラップ商品でより幅広い投資戦略をご利用いただけるよう、外部委託運用会社(サブアドバイザリー)や世界のお客様と協力し、提供するビークルを慎重に見直しています。

  • オルタナティブ — オルタナティブ資産への需要が高まる中、プライベート投資やヘッジファンドの分野を一段と強化しています。これらの分野におけるお客様の特定のニーズを満たすためのサービスの拡充に加え、伝統的な運用戦略とオルタナティブ戦略のチームの相互作用が、運用に関する対話や意思決定を向上させています。

    プライベート投資では、引き続きチームを拡大しており、直近では投資適格私募債と成長融資を専門とする人材を新たに加えました。不動産デットなど他の分野でもチームの拡大を進めており、プライベート投資のスキル向上に資する強力な運用力を有しています。現在、100人以上の専任スタッフがプライベート投資事業を支えています。

    また、グローバル・マルチ戦略分野など、リキッド・オルタナティブの運用力も強化しています。グローバル・マルチ戦略では新たな旗艦戦略を導入し、マルチ戦略ポートフォリオを運用してきた長い歴史を基盤に、幅広い投資機会と社内の専門的な人材を活用できるよう設計されており、ヘッジファンド・グループの各シニア・リーダーから成る11人のチームがリード・ポートフォリオ・マネジャーを支えています。

    オルタナティブ関連のもう1つの成長分野としてはローン担保証券(CLO)エクイティが挙げられ、私たちはCLO、銀行ローン、ハイイールド投資における豊富な経験、独自のクレジット・リサーチ、専門技術を活用しています。

    私たちはそれぞれのお客様に最適な方法とビークルでオルタナティブ投資ソリューションを提供することに重点を置いています。

  • 公開市場とプライベート市場の収斂 — 上述した公開市場とプライベート市場の収斂を踏まえ、2つの市場にまたがる経験を活用することが重要です。この2つの経験により、私たちは経済全体を総合的に組み込んだリサーチとソリューションを提供することが可能です。また、非公開企業の価値あるパートナーとなり、シードキャピタルから新規株式公開(IPO)に至るまでの道のりもサポートします。こうした取り組みをさらに進めるために、バリュー・クリエーション・チームを設立しました。このチームは、投資先の非公開企業と直接協力し、これらの企業を公開企業や投資家、外部パートナーと結びつけ、非公開企業の経営陣同士が知識を共有する機会を作り出し、コーポレート・ガバナンス、人材管理、気候変動リスクといったスチュワードシップ・テーマに関するガイダンスを提供することで、長期的な成功を追求します。

  • 運用ソリューション — 私たちは、ポートフォリオに関する特定の課題や目標を持つお客様がウエリントンを最適なパートナーとして選んでいただけるよう、すべての主要な資産クラス、テーマ、ファンダメンタル・ファクター、システマティック・ファクターにまたがって運用ソリューションを提供できる数少ない運用会社の1つです。お客様と独自の関係を築き、私たちのマルチアセットおよびマルチマネジャー運用やコンサルティング・サービス・モデルを活用しています。また、200を超える個別の運用戦略を駆使し、組み合わせることで、お客様の目標達成を支援する独自のリターンの源泉とリスク特性を持つポートフォリオを作成します。ソリューション・チームはウエリントンのリサーチ重視の企業文化を土台としており、リサーチは戦略的・戦術的な資産配分、マネジャー・リサーチ、リスク管理、ポートフォリオ構築に有用な情報を提供します。

  • 富裕層 — 私たちは90年以上にわたり富裕層のお客様にサービスを提供しており、世界中のアドバイザーやそのお客様との関係を深めたいと考えています。具体的には、さまざまな資産クラス、ヘッジファンド、プライベート投資にまたがる差別化された運用ソリューションを提供し、ウェルス・パートナーとの関係や提供するサービスの強化を進めています。

  • 規模と効率性 — こうした成長分野を支え、今後も優れた顧客サービスを提供し続けるには、拡張可能で効率的なビジネスが必要です。データ管理に対する高度なアプローチに投資することや、テクノロジーへの投資をビジネス目標と整合させることのほか、慎重な意思決定ができる会社運営・ガバナンスを行っています。

強固な基盤が出発点

私たちは中核的な強みを活かすことで、アクティブ運用の未来に向けた基盤を築いています。リサーチは今後も際立った強みであり続けるでしょう。また、キャリア・リサーチ・モデルへの投資を継続する予定であり、引き続き素晴らしい人材が集まることを期待しています。非公開のパートナーシップ制という会社形態にも引き続きコミットしており、試練の時期や変化の時期を通じてお客様と私たちを支える基盤となります。

コラボレーション(協働)重視の企業文化と強力な投資エコシステムも依然として私たちのユニークな競争優位性です。グローバルな顧客基盤の期待に応え、優れた人材に選ばれる企業であり続けるために必要な、アイデアの自由な流れや運用に関する活発な議論を後押ししています。最後に、重要なこととして、私たちは多様な背景を持つ個人がより優れた投資判断に資する独自の視点を生み出し、成長や成功のための公平な機会を見出せるような、包摂的な企業文化の醸成に引き続き取り組んでいます。

最後になりましたが、日頃よりウエリントンをご愛顧賜り、厚く御礼申し上げます。引き続き、お客様の期待と信頼にお応えすべく運用成果と資産運用サービスの提供に尽力してまいります。

皆様とご家族のご健勝とご多幸を祈念し、年頭の挨拶とさせていただきます。
 

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ジーン・ハインズ
ウエリントン・マネージメント
最高経営責任者(CEO)

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ジーン・ハインズ

最高経営責任者(CEO)