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ブレンダン・フラダー
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昨今、債券市場、そして多くのポートフォリオ・マネジャーによる運用のアルファは、景気に敏感なクレジット・リスクに左右されています。こうした傾向は、アセット・アロケーターが運用委託先であるアクティブ運用マネジャーのアルファ創出のバイアスを明確に理解する必要性を浮き彫りにしています。これは、クレジットへの投資機会が終わったわけではありません。クレジット・リスクをオーバーウエイトする投資スタイルはまだ通用すると見ています。しかし、アセット・アロケーターはより大局的な観点から、ポートフォリオ全体にわたる分散が十分かどうか見直す必要があるでしょう。
アセット・アロケーターは、十分な分散を図るために、補完的なアルファ創出スタイルを取り入れ、債券運用のアルファ創出を「円滑化」するよう設計された強固なポートフォリオ構築やマネジャー選択プロセスの採用を検討しなければならないと考えます。本稿では、そのために役立つ2つのツールとして、アクティブ運用マネジャーのアルファ創出パターンに焦点を当てたファクター・フレームワークと、資本配分に対する機動的なバーベル・アプローチを紹介します。
債券ポートフォリオの配分におけるアルファ創出のバランスを改善するために、私たちは「役割に基づく」フレームワークを策定しました。このフレームワークは、様々なスタイル・ファクター・カテゴリーにおけるアクティブ運用マネジャーのアルファ創出のパターンを理解することを目的としています。株式に関してよく議論されるスタイル・ファクターは、債券においても重要であり、債券ポートフォリオのアルファ創出にも利用できる可能性があります。私たちはこうしたスタイル・ファクターを、想定されるポートフォリオ内での役割と動向に基づき、すべての資産クラスにわたり次の5つのカテゴリーに分類しています。
債券市場では、これらのスタイル・ファクター・カテゴリーは自然に相互に分散効果をもたらすと考えます。クレジット市場におけるこのような分散の可能性を例示するため、市場環境フレームワークを活用します。このフレームワークは、世界の様々な状況に基づきアルファ創出動向を分析するためのリサーチ・ツールです。図表1の通り、まずクレジット市場全般のリスク・ファクターに目を向けました。これは、デュレーションの同じ米国債に対するハイイールド債券の超過リターンで示されます。次に、米国ハイイールド債券市場における平均回帰ファクターとリスク回避ファクターについて、クレジット・リスクの様々なレジームにおけるパフォーマンス(対指数)を調べました。図表1左図の青色および水色の棒グラフは、クレジット・リスクに対するリターンが指数に先行または遅行している(プラスまたはマイナスになっている)ときに各ファクターが創出した平均月次アルファを示しています。
図表2右図ではリスク管理の観点から、よりストレスのかかるレフト・テール(オレンジ色の棒グラフ)とライト・テール(紫色の棒グラフ)の市場環境における各ファクターのパフォーマンスも確認しました。レフト・テールとライト・テールは、クレジット市場のリスク・ファクターのリターンのうち、それぞれ下位10%と上位10%と定義されています。正常時(黄色の棒グラフ)は、市場の中間80%における平均アルファを示しています。
「先行(プラス)」環境では、平均回帰ファクターが83bpの平均月次アルファを実現した一方、リスク回避ファクターの平均月次アルファは-3bpでした。「遅行(マイナス)」環境では、リスク回避ファクターが平均35bpのアルファを生み出した一方、平均回帰ファクターは-21bpでした。この関係は、図表1の右図が示しているように、分布の「テール」(「ストレス」環境)では一段と極端になっています。例えば、平均回帰ファクターが正常時やリスク選好局面(ライト・テール)で重要な役割を果たしたのに対し、リスク回避ファクターはバランスをもたらし、平均回帰ファクターがアンダーパフォームする傾向にあるリスクオフ局面(レフト・テール)で堅調でした。
アクティブ運用の選択肢にスタイル・ファクターの視点を適用することで、アセット・アロケーターは運用委託先である運用マネジャーのアルファ・バイアスをより的確に理解し、それぞれの投資に求める役割をより慎重に定めることができるようになるでしょう。これは、異なる市場環境においてアルファ分散を追求する上で役立ち、現在の利回りとデュレーションの状況を考慮すると、特に重要であると考えます。
図表1
補完的スタイル・ファクターの追求
クレジット・リスクの通常およびストレス市場環境における平均月次アルファ(bps)
平均回帰とリスク回避は、Bloomberg US High Yield Indexの独自のファクターです。通常の市場環境は、ハイイールド債券の超過収益ファクターの遅行環境と先行環境における平均のストラテジー・アルファを示しています。ハイイールド債券の超過収益は、Bloomberg US High Yield Indexの構成銘柄の内、デュレーションが一致した国債に対する超過収益と定義されています。出所:ファクトセット、ブルームバーグのデータに基づきウエリントン・マネージメント作成。期間:2017年1月~2021年12月。※上記は過去の実績であり、将来の運用成果・市場環境等を示唆・保証するものではありません。
最近の堅調なリターンを背景に、足元の割高なバリュエーションは、クレジット・リスクを取ることによる幅広い超過リターンの獲得を難しくする可能性があります。このような動向は、デュレーションの長期化という観点からも考慮する必要があります。クレジット市場の発行体は債券の満期を長期化させており、その結果、市場全体のクレジット・スプレッド・デュレーション(価格に織り込まれているクレジット・リスク水準の変動に対する感応度)は過去最高水準にあります。また、社債市場の発行体のクレジット・スプレッド格差は昨今、極めて低い水準に低下しています(図表2)。
非対称的なリスクを伴うとみられるこのような環境下、確信度の高い高リスクの配分と、よりディフェンシブな配分を組み合わせる「バーベル」型のポートフォリオは、銘柄固有リスクが市場に戻るか、より幅広いバリュエーションの魅力が高まる場合に、リスクを機動的に追加する柔軟性を提供できるでしょう。
例えば、このアプローチでは、確信度の高い高リスクの投資先を保有しつつ、それを以下のような対象へのディフェンシブな配分と組み合わせることができます。
図表2
クレジット市場における個別銘柄間の格差は低下
社債の分散のパーセンタイルランク(%)(高いほどクレジット発行間のばらつきが大きい)
Bloomberg US Investment Grade Corporate IndexとBloomberg High Yield Corporate Indexの発行体の構成銘柄に基づきオプション調整後スプレッドの分散を独自の順位で示しています。出所:ファクトセット、ブルームバーグのデータに基づきウエリントン・マネージメント作成。期間:2007年7月~2021年12月。※上記は過去の実績であり、将来の運用成果・市場環境等を示唆・保証するものではありません。
ブレンダン・フラダー
カルロス・コウチーニョ
ノア・コメン