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ジェフリー・ホイヤー
- 債券ポートフォリオ・マネジャー
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2022年に入っても、インフレリスクは引き続き投資の観点で最も留意すべき要因です。新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的流行)の余波で、世界中で深刻な労働力不足とサプライチェーンの混乱が生じているため、インフレが投資に与え得る悪影響を見極める必要があるでしょう。私たちは、インフレ圧力の上昇が、米連邦準備理事会(FRB)など、世界各国の中央銀行による利上げのリスクを高めたと考えています。
さらに、バイデン米大統領が昨年11月にパウエルFRB議長の再任を決定したことも注目されます。パウエル議長の政策は他の議長候補者のそれよりもタカ派的であると見なされていたため、同議長の再任指名を受けて、市場は2022年末までに3回、2023年末までに5回の利上げが実施されるとの見通しを織り込みました。
金利上昇は伝統的な債券セクターにとって厳しい環境であることが過去の例から分かります。しかし、特定の債券セクターは金利上昇時に堅調に推移する傾向にあります。その典型的な例がバンクローンです。金利が上昇する局面において、変動金利商品であるバンクローンでは、クーポンが市場金利に概ね連動して上昇するため、金利上昇の債券価格へのマイナスの影響が相殺されます。つまり、短期金利の上昇から恩恵を受ける可能性があるということです。
実際、バンクローンは過去の金利上昇局面で固定利付の長期投資適格社債をアウトパフォームしました(図表1)。同じことが2022年にも起こる可能性があります。
クレディ・スイス・レバレッジドローン指数の算出が開始された1992年1月以降、FF(フェデラル・ファンド)レートの上昇局面は4回ありましたが、各局面でバンクローンは投資適格社債を大幅にアウトパフォームしました。
図表1
金利上昇局面でのバンクローンのパフォーマンス
米国FFレート(%)
出所:クレディ・スイスのデータに基づきウエリントン・マネージメント作成。2021年11月30日時点。※上記は過去の実績であり、将来の運用成果・市場環境等を示唆・保証するものではありません。
バンクローンについて、デュレーションリスクが限定的であることに加え、現在のインカムゲインの水準が魅力的であること、本稿執筆時点(2022年1月)で、バリュエーションに割高感がなく、他の債券セクターとは異なり、小幅ながらも価格上昇余地がある点にも注目しています。例えば、2021年12月31日時点のクレディ・スイス・レバレッジドローン指数の最終利回りは5.26%(フォワード・カーブを用い、すべての銘柄について最長3年で満期を迎えるとの前提で算出)、組み入れ銘柄の平均価格は98.39米ドルです。
バンクローンの発行体は新型コロナウイルス禍の発生以来、バランスシートの強化に努めており、そのインタレスト・カバレッジ・レシオ(企業の債務返済能力を測る指標:金融費用に対する事業利益の比率)は高く、手元流動性は潤沢です。さらに、信用力も改善しています。バンクローンの格下げの件数は減少し、デフォルト率は1.0%を大きく下回る水準へと低下しました。2022年のデフォルト率も低い水準で推移すると予想しています。
昨年、バンクローン投資信託への資金流入が活発であったことからも分かるように、バンクローンに対する需要は好調でした。今後数カ月間に金利上昇に対する防衛策を模索する動きが強まるとみられるため、2022年もバンクローンの需給関係は良好であると予想します。このように、今後1~2年のバンクローンに対して、私たちは前向きな見通しを持っています。今はバンクローンへの投資を開始または拡大する好機であると考えます。
機動的なポジションとしてではなく、バンクローンへの長期的かつ戦略的な資金配分を検討すべきでしょう。高いインカムゲインと金利上昇(そしてインフレ)に対する防御機能、さらには、他の資産クラスに対する低い相関性という特性を持ち合わせるバンクローンは長期投資ポートフォリオ内で有益な役割を果たすと考えます。
ジェフリー・ホイヤー
ディヴィッド・マーシャック
ニック・ライヒマン