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トーマス・ムーチャ
- 地政学ストラテジスト
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ウエリントン・マネージメントでは、2022年2月に「移行の年の地政学・マクロ経済と投資戦略」と題し、アジア・インベストメント・フォーラム(2022年第1四半期)を開催しました。ロシアや中国などを巡る地政学リスクへの警戒、強まるインフレ圧力などを踏まえ、今後の投資判断に大きく影響すると考える3つのメガトレンドについて地政学とマクロのストラテジスト、ポートフォリオ・マネジャーが読み解きます。
下記は2022年2月23日時点のものであり、将来予告なく変更される場合があります。
トーマス・ムーチャ
地政学ストラテジスト
世界最大で最も影響力のある大国間競争は、地政学的リスクの増大に発展すると見ています。米国および中国は、国家安全保障の強化と、新型コロナウイルス感染症によるロックダウン(都市封鎖)で深刻な混乱に陥ったサプライチェーン(供給網)の下支えのために、さまざまな同盟関係や経済協定の締結に動いています。
アジア太平洋地域では、米国側に付く国と中国側に付く国が現れ始めています。米国、日本、オーストラリア、インドの枠組み「Quad(クアッド)」安全保障対話の再開や、新たに成立した英国、米国、オーストラリアの「AUKUS(オーカス)」安全保障同盟は、米国がこの地域を重視していることを明確に示しています。対照的に、中国が広域経済構想「一帯一路」の一環として進めてきた多くの協定は、中国の地域的および世界的な野心を浮き彫りにしています。インド太平洋地域における中国の軍事行動を抑えるためには、米国主導の同盟と安全保障体制のさらなる調整と活用の深化が期待されます。
両国とも、軍事・経済発展の最前線に立つ戦略的産業に力を入れています。これには、半導体、次世代通信、ロボティクス、人工知能、量子コンピューティングなどの他、バイオテクノロジー、宇宙技術、レアアースも含まれます。国際戦略研究所(IISS)によると、アジア地域全体の軍事費は増加傾向にあり、2021年には2.8%増加しました。私は、今後数年間で世界の軍事費がさらに増加すると予想しています。
投資の中心はこうしたデュアルユース・テクノロジー(両用技術)に移り、これにより、防衛関連銘柄の概念が変わると考えます。
ジュヒ・ダワン
マクロ・ストラテジスト
2022年は正常化の年になると考えます。これは、本格的な景気回復に向けてさらに進む実体経済のみならず、インフレの観点からもそうであると言えます。そのため、各国中央銀行はこの2年間実施してきた緩和策から一歩後退し始めるものと予想しています。
私たちは昨今のインフレ圧力の高まりに注目すべきでしょう。米国では現在、食品やエネルギーのような頻繁に価格が上下する品目を追跡する指標の「フレキシブルCPI」が史上最高水準に達する一方で、米連邦準備理事会(FRB)の政策立案者は、医療品や家庭用品のような通常、価格が徐々にしか変化しない品目を追跡する指標の「スティッキーCPI」に特に注目しています。スティッキーCPIは、過去12か月で2%超の上昇となっています。私は、サプライチェーンのボトルネックが緩和されれば、フレキシブルCPIはすぐにでも落ち着くと見ています。
米国の雇用者数と賃金もパンデミック前の水準に戻っており、米国経済が正常化していることを示しています。私は、今年は多くの企業が売上高の伸びではなく、最終利益の拡大を優先すると予想しています。今後の市場にとって収益の変化が非常に重要なため、売上高の伸びより、収益を重視する企業に注目すべきでしょう。
ニック・サムイルハン
マルチアセット・ストラテジスト/ ポートフォリオ・マネジャー
中国の経済成長も期待されています。私は、中国の優先課題は経済と金融市場の抜本的な改革ではなく、安定した経済成長を重視していると考えます。
そのため、新しい成長サイクルが始まる可能性があります。新型コロナウイルス感染症の新たな変異株の流行が続く中、こうした予測は時期尚早との見方もあります。しかし、中国にはこうした事態を管理し、克服する力が十分に備わっていると考えています。他の国と比較し、中国はモノ重視の経済であるため、ロックダウンによる混乱の影響は受けにくいと言えます。これらを踏まえ、運用者はポートフォリオの構築の際に、中国を他の新興市場とは別の存在として見る向きが強まっています。
米国との競争という点では、2022年後半の中間選挙に向けた米国の政治家の発言と、ほぼ同時期に開催される中国共産党第20回全国代表大会での中国の政治家の発言が大きなカギを握っていると見ています。私は、民主、共和両党の候補者から反中国的な発言が飛び出すと予想しています。米国の政治日程は、米中関係の緊張を高めることになるでしょう。つまり、中国政府は米国議会の対応にさらに敏感になる可能性があるということです。
また、両国があらゆる産業分野で経済的にも軍事的にも優位に立とうとしのぎを削っていることから、両国関係は今後数年間でさらなる乖離が進むと予測しています。投資の観点からは、これらのセクターのうち、どのセクターが政策的に優先度が高いかを見極め、それに従って資本を配分することが課題であり、機会でもあります。トップダウンのマクロトレンドとボトムアップ分析を融合させることができる運用者が、こうした環境下で良好な成果を上げると考えています。
トーマス・ムーチャ
ジュヒ・ダワン
ニック・サムイルハン