2025年市場展望:株式

アクティブ投資に好機か?2025年の株式投資アイデア5選

2025-12-31
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※下記コメントは2024年12月(米国時間)時点のものであり、将来予告なく変更される場合があります。

2024年を通じて世界の経済成長は非常に安定しており、ここ数ヵ月で成長が加速し始めています。世界の工業セクターは、需要の弱さと世界的な貿易の停滞を背景に不況に陥っていますが、底堅い内需とサービス業の活動が補っています。2025年を目前に、世界経済は重要な転換点に差し掛かっています。次期トランプ政権や中国の刺激策の影響はまだ不透明でリスクがありますが、米国を筆頭に、成長は加速する見込みです。とはいえ、株式投資家にとって環境の変化を見極めることが有益でしょう。

根本的な反転

世界的な金融危機が過ぎ去って以降、インフレは低水準を推移してきました。そのため、各国中央銀行は経済成長を支えるために必要であれば自由に、同調的に金融政策を調整することができました。このような環境では、株式市場は連動する傾向にあり、分散投資による付加価値はほとんどありませんでした。相関性が高い一方で名目成長率と資本コストが低い中、株式市場で平均を超える成果を上げるには、成長が著しい企業やビジネスモデルを特定することが重要でした。

しかし、パンデミック後にインフレが上昇し始めると、金融政策は大きく変わりました。金利はマイナスやゼロから大幅に引き上げられ、量的緩和は量的引き締めへとシフトしました。政策当局者は今や、経済成長とインフレの継続的なトレードオフに対応する必要があり、金融政策はより引き締め的にならざるを得ないことを意味します。

さらに、世界経済は複数の変化に直面しています。地政学的緊張と貿易摩擦の激化に伴いグローバル化は鈍化または逆戻りしており、政策当局は国内重視の姿勢と介入主義を強めています。また、政府は金融主導の体制によって生じた構造的不均衡の一部を解消しようとする中、財政政策の役割はますます重要になっています。

以下の背景は世界の株式投資家に何を意味し得るか?

背景意味合い
インフレ率と金利は構造的に高水準にとどまり、さらに不安定化する可能性が高い資本コストがより重要になる
政治介入は増え続け、グローバル市場間のばらつきは広がり続ける分散がより重要になる
経済成長の範囲拡大によって、セクター・市場全体で基礎的なパフォーマンスが広がる見通し。成長は常に重要だが、期待のスタート地点も重要であるバリュエーションの明確化がより重要になる

こうした変化を踏まえ、2025年には、以下の5つのテーマが世界の株式市場全体に大きな機会をもたらすと考えられます。

Valuation snapshot reveals regional differences

1) 株式市場のパフォーマンスの範囲拡大は今後も続くのか?

人工知能(AI)の発展に牽引された力強い増益により、「マグニフィセント・セブン(米国主要テクノロジー企業7銘柄)」の株価は著しく上昇し、他の銘柄との差が広がりました。2024年後半になると、増益銘柄は超大型株以外にも広がり始めました。経済成長の拡大、インフレ低下、短期金利の低下といった要因が重なり、幅広いセクターに恩恵をもたらしています。さらに、2025年には、超大型株の収益は極端な急成長と高利益を記録した過去2年と比べて落ち着く見通しである一方、市場のその他の銘柄は過去2年の収益悪化から回復する見通しです。

こうした成長の範囲拡大は、ばらつきの広がりや相関の低下、ボラティリティの上昇と相まって、機動的な投資家に銘柄選択の機会を生み出すでしょう。

Earnings growth is broading out in US quity market

2) 分散に再び妙味があるのか?

世界的な金融危機の後、世界の各中央銀行は、米連邦準備制度理事会(FRB)主導の利下げや利上げに追随する傾向にありました。これにより、景気サイクルが同調し、各国の株式市場間の相関が高まり、地域分散のメリットが減少しました。

しかし、今後はインフレ率が構造的に上昇するうえ、国ごとに大きくばらつくことが予想されます。その結果、各中央銀行が自国の固有の問題に対処しようと金利を調整し、景気サイクルは同調しなくなるでしょう。日本と欧州の金融政策サイクルの乖離はその好例です。日本と欧州の経済は構造的に似ているものの、日本は利上げサイクルに突入したばかりであるのに対し、欧州は緩和サイクルの半ばです。

この傾向はすでに株式市場にも表れており、各国間の相関は20年来の低水準です1。こうした環境ではグローバル分散がより大きな価値をもたらし、地域間のばらつきが一段と大きくなれば、2期目のトランプ政権の政策案が具体化する2025年には特に、アクティブ投資家に投資機会が生じると考えられます。

3) 地域分散にとどまらず分散を進めるべきか?

金融政策の乖離が広がり、政策当局の国内重視姿勢と介入主義が強まると、地域間の乖離は新たな形に変わるでしょう。しかし、投資家は国別の要因以外にも分散対象を探す必要があります。20年前とは異なり、株式が上場している場所は今やパフォーマンスの主な決定要因ではありません。現在、株式のパフォーマンスはは地域よりも帰属するセクターやテーマとの相関性が高くなっています。その理由は2つあります。第一に、大型株はより国際的な影響を受けやすくなっています。第二に、投資家が経済の長期的・構造的変化に合わせてポートフォリオを調整する中、テーマ別投資の人気が高まっています。

こうした環境では、地域分散は依然として重要ですが、国際安全保障やオートメーション化、エネルギー転換、医療革新など、構造変化の恩恵を受けるとみられる分野に的を絞ったテーマ別戦略など、経済にまたがるテーマに資金を広く分散する必要もあります。AIは2025年も引き続き重要なテーマとなるでしょうが、トランプ政権の政策が注目の的となり、市場に大きなばらつきと不透明感をもたらすでしょう。これには、関税、移民規制の強化、インフレ削減法の一部または全面廃止などの逆風と規制緩和、減税、歳出削減、M&Aの増加などの追い風をどちらも含み、株式市場への影響は広範囲に及ぶ可能性があります。

Stocks are less correleated to their region than they were 20 years ago

4) 欧州は株式投資家にとって魅力的な市場になり得るのか?

現在の欧州は、2000年と2008年に見られたような重大なレジームシフトの局面にあり、これが欧州株式をアクティブ投資家にとって特に魅力的な市場にしていると考えられます。このシフトを牽引している主な要因は以下の3つです:

  • • 地政学的緊張と貿易摩擦の激化に伴い、グローバル化が減速しています。欧州は開放経済であるため、この変化の影響を受けやすいです。
  • 過去10年にわたる異例の金融緩和政策を経て、欧州はより引き締め的な金融環境に移行しつつあります。
  • 欧州は開放度の高い経済ですが、国内重視の姿勢と介入主義が強まっており、国家安全保障とエネルギー転換が政策決定の中心に置かれています。人口動態の変化と金利の上昇もこの変化に寄与しています。

これらの要因は、欧州の金融市場と株式に大きな影響を及ぼすと考えられます。私たちは、インフレ率と金利が構造的に上昇し、政治介入が増加し、バリュエーションが再び重視され、海外展開の相対的な魅力度が低下すると予想しています。

このレジームシフトの恩恵を受けるのは、主に欧州の銀行や電気通信、防衛などのセクターのバリュー株や小型株だと考えます。反対に、グローバル化と低金利の恩恵を受けてきたセクターは苦戦を強いられるでしょう。

5) 2025年に中小企業の価値は高まるのか?

歴史的に中小企業は大企業よりも急速に成長してきたため、小型株は長期的に大型株をアウトパフォームしてきました。過去のパターンが続く保証はないものの、リードする立場が小型株と大型株で入れ替わる傾向にあり、そのサイクルは基本的に10~15年続きます。小型株は13年以上にわたってアンダーパフォームしてきたため、そのバリュエーションは大型株に比べて歴史的に大幅に割安です。

こうしたアンダーパフォーマンスの要因として、一つには小型株が経済情勢と金利上昇により敏感であるため、過去2年間で収益が大きく打撃を受けてきました。私たちは、経済成長の範囲拡大、インフレ率の低下および金利の低下によって、過去2年間に小型株が直面していた収益の逆風は後退し始めるとみています。売上と利益成長率が正常化すれば、特に欧米全体で、小型株はアクティブ運用マネジャーにとって魅力的な資産クラスとなるでしょう。次期トランプ政権が規制緩和とM&Aの増加につながるかも注視しています。これらの制作は、小型株市場の特定の分野に恩恵をもたらす可能性があります。さらに、小型株は一般に大型株よりも市場の効率性が低く、過小評価された銘柄を見つける機会を生み出しています。

まとめ

2025年に向けて、世界の株式市場は大きく変化する構えにあります。増益の範囲拡大、グローバル分散における新たな価値、中小企業の潜在力を踏まえると、魅力的な投資機会が期待されます。セクターや地域全体で過小評価された機会を特定し、より戦略的な分散アプローチを取ることが、変化の激しい2025年の投資環境を乗り切るカギとなるでしょう。

1Bloomberg Finance LLP、2024年6月

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アンドリュー・ハイスケル

株式ストラテジスト
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ニコラス・ワイレンゼック

マクロ・ストラテジスト