2024年下半期市場展望:オルタナティブ

「3つのD」への投資:2024年のオルタナティブ投資機会を生み出す要因

2025-12-31
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2024年下半期も3つの重要なトレンドが続き、投資にさまざまな影響を及ぼすと考えます。

  • ダイバージェンス(乖離) — 世界金融危機後、世界経済が変貌を遂げる過程で、各国景気サイクルの局面にますます違いが現れ、その結果、欧州の利下げと日本の利上げのように、金融・財政政策も多様化しています。
  • ディスラプション(破壊) — 人工知能(AI)に加え、バイオテクノロジーやフィンテックなどの技術革新により、勝者と敗者の構図が変わりつつあります。
  • ディスパージョン(ばらつき) — マクロ環境や市場環境の均質性が低下し、企業業績に大きな格差が生じています。

上記3つのトレンドが重なることで、流動性の高いオルタナティブ投資やヘッジファンドを含むアクティブ運用の機会につながると考えています。具体的に、私たちは以下の投資アイデアを検討すべきと考えます。

グローバル・マクロ投資 — 成長率やインフレ率の乖離などの経済のボラティリティの高まり、地政学的な不確実性、そして異なる金融および財政政策はマクロ志向の戦略に豊富な機会をもたらすため、グローバル・マクロ投資はダイバージェンスを利用する当然の方法かもしれません。熟練したマクロ・マネージャーであれば、金利、通貨、クレジット、その他の市場のいずれにおいても、資産価格が経済の実態を反映していない状況を見極めることができます。また、マクロ戦略は分散化にもつながります。例えば、流動性の高い公開市場のほぼすべての分野でロング/ショート可能というマクロ戦略の柔軟性は、他の資産が苦戦する中でも収益を上げることができるかもしれません。

エクステンション戦略 — 130/30戦略(130ロング/30ショート戦略)または140/40戦略(140ロング/40ショート戦略)とも呼ばれるエクステンション戦略は、AIによるディスラプションが世界の株式市場の極端な集中を引き起こしている市場環境において、価値を生み出す効果的な方法かもしれません。2024年3月現在、MSCIワールド・インデックスを構成する銘柄の約86%はベンチマークにおけるウエイトが10bps未満であることから、ロング・オンリーのマネージャーは、超大型株を大幅にアンダーウエイトすることなく、選好銘柄を追加することは困難です。また、超大型株を大幅にアンダーウエイトした場合、意図しないリスクが発生する可能性もあります。一方、エクステンション戦略のマネージャーは株式をショートすることができるため、資金を捻出するためにインデックス内の大型銘柄を(平均して)アンダーウエイトすることなく、選好する銘柄を柔軟にオーバーウエイトすることができます。

セクターのロング/ショート戦略 — 勝ち組企業と負け組企業の差がますます明確になる市場環境の中、ロング/ショート戦略を取ることで、ディスパージョンから利益を得ることができるかもしれません。こうしたディスパージョンは、エネルギーや金融セクターなど、急速に変貌を遂げつつあるセクターで最も顕著に現れていると考えます。当社の金融セクターチームは、ディスパージョンが明確に見られる分野として、財務体質が強固で規制環境が改善方向にある大手銀行と、より厳しい規制環境に直面している地方銀行を挙げています。注目すべきは、ディスパージョンを示すセクターの多くが現状、「バリュー」ユニバースに分類されていることです。投資家の中にはスタイル面での過度なティルトをためらう向きもありますが、これもロング/ショート戦略を採用すべきもう一つの理由であると考えられます。

地域的な機会に的を絞ったロング/ショート戦略 — 地域や国によって企業業績のディスパージョンが大きい場合、魅力的な機会を生み出す可能性があります。当社の一部株式運用者は、欧州の構造的な変化により、特定の国や特定の企業が優位に立つ可能性が高いとして、注目しています。脱グローバリゼーションへのシフトに伴い、国内成長に軸足を置くことのできる国や企業は、輸出主導型の国や企業よりも優位に立てる可能性があります。あるいは、財政政策も同じです。欧州のように多様性に富む地域では、政治的・経済的課題は国によって大きく異なるため、財政刺激策の効果もさまざまであり、セクターや国によって異なる影響が生じます。

オポチュニスティックかつタクティカルなアイデア — 経済や政策面でのボラティリティの高まりに伴い、4つ目の「D」である市場のディスロケーション(混乱)が頻繁に起こる可能性があります。一部のアセットオーナーは、こうした「D」に乗じるべく、懇意のオルタナティブ投資パートナーから得られるごく短期のタクティカルな投資機会や共同投資の機会に加わろうとしています。 これらアセットオーナーは、こうした「取引」が持つさまざまな運用期間や期待リスク/リターン・パラメーター、基礎となる流動性特性を考慮した上で、補完的な投資機会をより正確に組み合わせることができると考えられます。

ヘッジファンドの役割とマルチ戦略のアプローチに関する考察

最終的に、オルタナティブ投資に関してアセットオーナーが取り得る最も重要なステップの一つは、期待する目的と整合した戦略を選択することです。私たちチームは最近、ヘッジファンドを選択し、組み合わせることにより、リターンの向上、リターンの一貫性、分散化、ダウンサイド・プロテクションといった4つのポートフォリオ目標のいずれか、または複数との強力な整合性を生み出すフレームワークについて執筆しました(英語のみ:Can hedge funds play the role?)。アセットオーナーは、個々のヘッジファンドの選択のみならず、マルチ戦略のヘッジファンドを活用することにより、さまざまな戦略タイプへの分散投資やリスク/リターン・プロファイルの安定化など、数々の恩恵を受けることができるでしょう。

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アダム・バーガー

マルチアセット・ストラテジー・ヘッド
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ニック・サムイルハン

マルチアセット・ストラテジー・ヘッド(APAC)