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ヨランダ・コーティンス
- 株式ポートフォリオ・マネジャー
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過去10年間にわたり、しばしばESGという頭文字で分類されるサステナビリティ(持続可能性)への配慮は、投資課題の中で着実にその重要性を増してきています。歴史的に、投資家の関心は主に環境(E)とガバナンス(G)に向けられてきました。しかし、脱グローバル化、労使関係やサプライチェーン・マネジメントへの関心の高まり、人工知能(AI)、そして公正なネット・ゼロへの移行の必要性など、主要な動向はすべて、社会的(S)側面の財務的重要性が増していることを示しています。このような視点で企業を精査することにより、私たちは、企業文化やサプライチェーン・マネジメントなど、企業にとって長期的な成功にますます不可欠となっている要素を評価することができます。また、特定の状況下では、社会的テーマが追加の分散要因として機能することも確認できており、教育などの分野の企業とその歴史的なディフェンシブ性が一例として挙げられます。
私たちは2023年、5,500を超える上場企業・発行体と17,500回以上のミーティングを実施し、社会的なテーマを含む様々な議題について話し合いました。1そして、議論の成果は、運用チームが活用するリサーチの情報をより豊かなものにしています。また、私たち独自のESGスコアの採点や公正なネットゼロ・エネルギー転換、反現代奴隷制に関するリスクと機会の調査にも役立っています。さらに、2023年に追跡調査したエンゲージメントも、社会的なテーマの重要性の高まりを反映しています(図表1)。
出所:ウエリントン・マネージメント。2023年12月31日時点。上記データはESGトピックが取り上げられた3,411件のミーティングを対象としています。多くのエンゲージメントにて複数のE、S、Gトピックを取り上げているため、カテゴリー別のエンゲージメントはあくまでも目安となります。※上記は過去の実績であり、将来の運用成果・市場環境等を示唆・保証するものではありません。上記はあくまで例示目的で示しています。
私たちはこのような背景から、社会的リスクと機会を、より大きなそして持続可能なリターンに結び付けるため、インパクト投資、スチュワードシップ投資、テーマ投資の3つのアプローチを策定しています。それぞれの観点は方向性が異なるものの、いずれもアクティブ運用とエンゲージメントに重点を置いています。
インパクト投資のアプローチは、より高いリターンと測定可能なプラスの影響(インパクト)の両方を明確な目的とします。世界で最も差し迫った問題の多くは社会的側面と関係性が強く、私たちはそれらの解消に取り組むソリューションに投資することで、以下のような付加価値を提供できると考えています:
インパクト関連の債券投資は、地方債から社債、政府機関債から社会政府債に至るまで、債券全域にわたって株式市場ではほとんど捉えられていない有望な分野をターゲットとすることができるため、分散投資を更に促進することができます。さらに債券投資は、目の前の環境や社会問題の大きさに比例した資本を投下できるという利点もあります。
教育と職業訓練は、社会的なインパクトをもたらす重要な分野です。対面授業を改善し、遠隔地からの教育を拡大するためのソリューションは、特に低所得層の人々にとって、広範囲かつ長期にわたるプラスの波及効果をもたらす可能性があります。教育の特定の分野は、歴史的にディフェンシブな性質を示してきたため、教育というテーマは重要な分散要因であると考えています。中でも私たちは以下のような魅力的な機会があると見ています:
私たちは、長期的な価値を創造するためには、責任を持って自然資源、人的資源、財務資源を戦略的に管理することが不可欠な条件であると考えているため、スチュワードシップには常に強い社会的要素が含まれると見ています。全てのステークホルダー(利害関係者)のニーズを常に考え、人、地球、そして利益のためにそのバランスを図っている企業は、長期的に市場のリーダーシップを維持し、優れた収益性を実現できると考えます。スチュワードシップ投資は、長期的に銘柄を保有するという性質上、積極的なエンゲージメントが重要であり、社会的なテーマはこのようなエンゲージメントにおける議論の重要な議題となっています。
グローバル・サプライチェーンは、企業や投資家にとって盲点となることが多いものの、近年の途絶・混乱がきっかけとなった調達・在庫管理を最大限効率化しようとする動きは、意図しない脆弱性や風評リスクを生み出しています。そのため、私たちは、投資先企業がこれらのリスクに積極的に取り組み、より強靭で持続可能なサプライチェーンを構築していることを示す裏付けが重要であると考えています。事例として、以下の2社に対するアプローチをご紹介します:
長期的な次世代のテーマも多くは社会的な色合いが濃いため、それらに焦点を当てることによっても社会的リスクと機会を捉えることができます。イノベーション(革新)、サステナビリティ(持続可能性)、インクルージョン(包摂)を中核のテーマとし、さまざまなチームの幅広いリサーチの視点を活用することで、構造的な社会の変化の中で勝者となり得る企業を見極め、魅力的なリスク・リターンが期待できる分散型ポートフォリオを構築することができると考えています。
近年の科学、器具、技術の進歩は、より効果的且つ正確で、副作用の少ない治療法への道を開いています。私たちは、医療技術(メドテック)とバイオテクノロジー(バイオテック)の分野で特に有望な発展があると見ています。これらの分野での技術革新は、より質の高い診断や治療などを通じて医療や社会に大きな利益をもたらす可能性があります。しかし、その一方で、新たな倫理的、社会的な問題も生まれています。これらの問題に対する懸念が解消されれば、革新的な技術や治療法の市場は、テーマ投資家にとって大きな機会を創出するでしょう。私たちが特定している例には以下が含まれます:
私たちは、社会的リスクと機会に積極的に焦点を当てることにより、最も革新的な企業や発行体へのエクスポージャーから利益を獲得し、より強固で多様なポートフォリオを構築できると考えます。社会的投資の魅力的なリターンとその潜在的な持続性から利益を得るための3つのアプローチを紹介しましたが、これらは社会的配慮を取り入れることによって、中核となるポートフォリオを大幅に強化できることを示す具体的な事例だと考えます。
1Source: Wellington. For illustrative purposes only. For illustrative purposes only. Data represents meetings with public-market issuers as of 31 December 2023. “Issuers” refers to companies and sovereigns. For the Wellington Management group of companies. While all meetings inform our investment processes, ESG topics are not covered at every meeting. | 2Nathalie Conrad PhD et al, “Incidence, prevalence, and co-occurrence of autoimmune disorders over time and by age, sex, and socioeconomic status: a population-based cohort study of 22 million individuals in the UK”, The Lancet, 3 June 2023.