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アダム・バーガー
- マルチアセット・ストラテジー・ヘッド
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※下記コメントは2023年12月(米国時間)時点のものであり、将来予告なく変更される場合があります。
2023年は多くの側面において年初と同じ状況で年末を迎えています。つまり、投資家はインフレ(安心感を得られるほど落ち着いたのか)、金利(より長期的により高い水準となるのか)、経済成長(景気減速か景気後退か)の動向に疑問を抱いているということです。2024年は再びデジャブ(既視感)のような状況に陥り、マクロ経済と市場の不確実性が大きなテーマになる事が予想されます。そう考えると、アセット・アロケーターにとっては、オルタナティブ投資やそのポートフォリオ内での役割を見直す好機となるかもしれません。
より魅力的なリターンの追求 - 現在の環境では、資本コストの上昇からマクロ経済サイクルの変動まで、企業は多くの課題に直面しています。しかしこうした状況により、企業がより明確な勝者と敗者に分かれ、差別化される可能性もあります。そうなれば、ロング・ショート戦略の活用などにより、銘柄を差別化することで価値を追加する機会を拡大することができます。
ロング・ショート戦略においては欧州が対象市場の一つとなり得ます。インフレ進行、金利上昇など欧州の状況が構造的に変化すれば、ここ数年よりもリターンがばらつきやすくなり、ファンダメンタルを重視するロング・ショート投資家にとって魅力的な投資機会が増す可能性があります。
金融セクターについて考えてみましょう。世界金融危機後の前例のない流動性の時代には、良いビジネスモデルと悪いビジネスモデルを区別することが全体的に評価されていませんでした。しかし、その状況は変わりつつあるようです。新しい高金利・低流動性環境は「優良企業が再び自分たちを差別化できる」ことを意味します。
分散化とダウンサイドリスク軽減策の追加 - 2023年は経済の不確実性が全面的に見られ、多くの人が予想したリセッション入りは現実化しませんでした。2024年も同様の状況になり得ると考える人にとっては、分散化とダウンサイドリスク軽減の両面で効果的な戦略が存在すると考えています。また分散投資に寄与する要因として、地域ごとに政策路線が異なることが挙げられます(例えば、米国は引き締めサイクルの終盤にいる一方で日本は根強い実質マイナス金利が続いています)。この根本的な相違は、バリュエーションと相対パフォーマンスのより持続的な差に反映されています。 最後に、2022年に株式と債券の両方が苦戦し、ポートフォリオでリスクを軽減する重要な関係性が覆ったことについても振り返っておきます。これまで述べてきたように、株式と債券の正の相関関係は、将来的にはさらに顕在化する可能性があり、さらなる分散化とダウンサイドリスクの軽減が必要になるでしょう。
では、オルタナティブ・ポートフォリオにおける分散機会はどこにあるのでしょうか。現在の環境は、地域の違いの活用など、マクロ戦略が付加価値を生み出す余地をもたらしていると考えています。また、マクロ戦略は不安定な環境におけるダウンサイドリスクを軽減させる可能性があります。
マルチ戦略ファンドは分散的なリターンをもたらす可能性があるため、アセット・アロケーターはこうした戦略を検討しても良いでしょう。マルチ戦略ファンドは、単一のマネージャーが舵取りをすることで分散されたアルファの源泉を集め、基となる戦略やマネージャー間の予期せぬ望ましくない相関関係を制限することができる場合があります。
効率的な市場でのツールキットの拡大 - 一握りの大型株が支配する狭い市場や指数の影響に直面する中で、市場構造は特に米国や世界の株式投資家が関心を示す重要な領域となっています。 狭い市場はアクティブ運用者にとっては逆風となりますが、パッシブ運用者にとっても、過去と比較して銘柄やセクター別の分散が不十分な指数を抱える状況になっています。そこで、アクティブ・エクステンション戦略が役割を果たすことができると考えます。
130/30戦略(130ロング/30ショート戦略)または140/40戦略(140ロング/40ショート戦略)と呼ばれることが多いこの戦略は、コア株式プロファイルと整合的な中程度のトラッキング・リスクを維持しながら、ベンチマークを上回るパフォーマンスを追求します。主な違いはエクステンション戦略には空売りに対する柔軟性があることです。つまり、ポートフォリオ・マネージャーは、資本を調達するために指数最大の銘柄を(平均的に)アンダーウエイトする必要なく、自分が選好する銘柄をオーバーウエイトすることができます。他のアクティブ株式戦略と比較すると、超大型株が相場の上昇をけん引する場合でも、アンダーパフォーマンスとなるエクスポージャーが低くなる可能性があります。ショート戦略の活用は、効率的な市場(例えば、大型株)でリターンを促進しようとするアセット・アロケーターにとっても魅力的です。この市場では、ポートフォリオ・マネージャーは差別化されたロング・アイデアを見つけようとするよりも、「ショート・アルファ」の機会を見つける方が容易となる場合があります。
もちろん、現在の不確実な環境において、いくつかのオルタナティブ戦略がそれぞれ独自の課題に直面することはないと言っているわけではありません。しかし、2024年にはポートフォリオの多くの役割をオルタナティブが担うようになると考えています。私たちは引き続き、オルタナティブ投資の意思決定に役立つよう、ヘッジファンドに関するリサーチを継続していきます。
アダム・バーガー
ニック・サムイルハン