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マイケル・カーメン
- プライベート・インベストメント 共同ヘッド
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※下記コメントは2024年12月(米国時間)時点のものであり、将来予告なく変更される場合があります。
ベンチャーキャピタルは数年間の困難を経て、2024年に待望の回復の兆しが見え始めました。回復は迅速なものではなく、流動性も依然として限られていますが、2025年に向けてベンチャーキャピタルを取り巻く環境はここ数年より改善すると予想されます。
本稿では、過去1年間のベンチャーキャピタルの回復を振り返り、2025年に成長を後押しするとみられる5つのトレンドをご紹介します。
2024年には投資が緩やかに回復し、前年比20%増加しました(図表1)。注目すべきは、取引の質が向上している点です。資金調達の場に戻ってくる企業が増えているだけでなく、比較的強い企業が戻ってきています。
図表1
これには主に3つの要因があると考えられます。1)上場株式の好調なリターンを受けて、創業者らが同業他社との比較や市場の安定性に対する信頼を取り戻していること、2)2022年に設定された2年間のキャッシュ・ランウェイ(企業の資金が枯渇するまでの期間)が今や終わりつつあること、3)2021年以降、質の高い企業が時間をかけて成長し、そうした企業のバリュエーションが高まっていることです。
重要なのは、バリュエーションが妥当な水準にある中でこのトレンドが進行している点です(図表2)。現在、大半の取引が過去の平均水準でプライシングされています(AI関連は例外です)。
図表2
投資の緩やかな増加とバリュエーションの調整は2025年も続く見通しです。特に、良好なエグジット市場が市場に活気をもたらし、過去と同様に投資とバリュエーションが大幅に増加/上昇する可能性があります。投資の増加は一般的に健全な市場を意味しますが、私たちはバリュエーションがエグジットの成功を支える水準にあるかどうかを注視しています。
2025年のベンチャーキャピタルを語る上で、AIの存在を無視することはできません。私たちはAIの発展に期待を寄せており、そのディスラプション(創造的破壊)はベンチャーキャピタルに大きな機会をもたらすと考えています。一方で、今後数年に避けるべき潜在的なリスクも存在します。
AIの急速な成長はドットコムバブルを彷彿とさせ、この時期からの重要な教訓の1つは、先行者利益の誤解です(図表3)。初期のインターネット企業の成り行きがさまざまだったように、AI分野でも初期の成功が長期的な優位性につながるとは限りません。投資家にとっての課題は、Amazonのようなスケーラブルな競争優位性を持つ耐久性のある企業と、CMGIのような初期の一時的な成功に終わる耐久性のない企業を見極めることです。このような違いを理解することは、AIベンチャー投資の現状と将来を見極めるカギとなります。
図表3
AIの変化のスピード、モデルの改良、全体的なイノベーションを踏まえると、スタートアップ企業の勝者を予測するのは困難です。しかし、過去の混乱期と同様に、巨大なAIネイティブ企業が誕生しつつあるいう楽観的な見方もできます。この成長の最初の波には明確な勝者がいるようです。具体的には、GPUサプライヤー、基盤モデル開発企業、クラウドコンピューティング機能のサプライヤーなど実現技術を提供する企業が挙げられますが、現在はこのトレンドのごく初期段階にあり、応用が定着するまでには時間がかかるかもしれません。ベンチャー投資家の仕事は、長期的に成功する可能性が最も高いセクターや企業を見極めることです。また、広い視野を保ち、Googleのような最大の勝者の多くが第二の波で生まれる可能性があると認識することも必要です。
2025年のIPO市場は、以下の3つの要因により回復が見込まれています。第一に、歴史的に見て、過去40年における米国のIPO活動のピークから次のピークまでの期間は最長3年で、2024年末は3年目の終わりに当たります。第二に、米国の大統領選挙翌年におけるIPO活動は、選挙年よりも39%、他の年よりも24%多い傾向にあります。どちらの歴史的傾向も、2025年の市場が回復に向けて準備が整っていることを示唆しています。
第三に、経営陣はIPOを検討する際には通常、最近IPOを実施した同業他社のパフォーマンスを確認します。注目すべきは、2024年には発行が低水準にとどまっているにもかかわらず、パフォーマンスが好調なことです。2024年第1~3四半期と2023年の同時期を比べると、米国でのIPOが24%増えたのに対し、調達額は37%増加しました。さらに、IPO後のパフォーマンスはこれまでのところ非常に好調で、米国のIPO企業はS&P指数を10%近くアウトパフォームしています。以下では、第2次トランプ政権(トランプ2.0)による規制緩和がIPO/合併・買収(M&A)件数に及ぼすとみられる影響や、2024年の米国選挙によるその他の影響について詳しく見ていきます。
先般の選挙結果は、エグジット活動、企業業績、インフレ/金利環境などを通じて、プライベート・エクイティに(さまざまではあるものの)大きな影響を与えると予想されます。これらは大まかに短期的な影響と中長期的な影響に分けられます。
新政権の政策課題は、規制や監視の緩和、そして場合によっては暗号資産(仮想通貨)関連ビジネスモデルの加速を示唆しています。指名承認公聴会の結果が出るまでの間に、米連邦取引委員会(FTC)のM&Aへの関与も変化し、プライベート・エクイティに必要な流動性が解放される可能性があります。
全体として、こうした短期的な影響はプライベート・エクイティの流動性にとって追い風となり得ます。この見通しを裏付ける初期兆候として、トランプ氏の当選以降、投資銀行の株価が著しく上昇していることが挙げられます。さらに、ゴールドマン・サックスのIPO発行バロメーターは現在137(過去の基準値は100)となっています。最後に、減税が実施されれば、ベンチャーキャピタル支援企業の短期的業績もさらに押し上げられるでしょう。
トランプ次期大統領は立法を必要としない関税を実施する可能性があるため、多くの投資家は通商政策を注視しています。ゴールドマン・サックスのエコノミストによれば、トランプ氏は中国からの輸入品に平均20%の追加関税を課す見通しです。欧州企業も関税の対象となるかもしれません。興味深いこととして、通商政策を巡る不確実性は、関税そのものよりも大きな経済的影響をもたらす可能性があります。
関税が実施されれば、インフレ率は現在の軌道を維持できず、再び上昇に転じる可能性があります。そうなれば、従来の予想よりも利下げ幅が縮小し、極端な場合には米連邦準備理事会(FRB)による利上げも考えられます。
FRBが最近利下げを実施したにもかかわらず、選挙後に長期国債の利回りが上昇したことは、市場が長期にわたる高金利環境を織り込んでいることを示唆しています。投資家は、それに応じてプライベート・ポートフォリオを調整する必要があるでしょう。
ほとんどのマクロ経済動向と同様に、金利変動の影響はまず公開市場に現れ、時とともに、プライベートマーケット(未上場株式市場)に波及する傾向にあります。しかし、投資家にとって重要なのは、プライベート・エクイティ投資の種類によって金利エクスポージャーの程度が異なることを理解することです(図表4)。
図表4
バイアウトファンドは取引の資金調達にレバレッジを利用するため、金利の影響を直接受けやすいです。ベンチャーキャピタルファンドやグロースエクイティファンドは投資資金の調達にレバレッジをほとんど利用しないことから、金利の直接的な影響は少ない傾向にあるものの、主にバリュエーションの変化を通じて間接的な影響を受けます。バリュエーションはすでに歴史的な水準にあるため、バリュエーションの低下はさほど懸念されません。
ベンチャーキャピタルファンドやグロースエクイティファンドはこうした動きから最も利益を得る一方、バイアウトファンドは予想されるインフレと金利上昇の影響を受ける可能性があります。結果がどうであろうと、想定されるボラティリティを乗り切るためには、プライベート・エクイティ全体に広く分散投資することが重要です。ベンチャーキャピタル、グロース、バイアウトの各ファンドをポートフォリオに組み入れることで、投資家は企業のライフサイクル全体にわたって投資し、エクスポージャーや分散を改善できる可能性があります。
市場の調整後はしばしば絶好の投資機会となります。2025年に向けて、ベンチャーキャピタル市場とプライベート・エクイティ市場は、AIの進歩、IPO市場の回復、好ましい規制動向を原動力に成長が期待されます。プライベートマーケットに対するバランスの取れた、多様で柔軟なアプローチを維持することで、投資家は現在の変化する市場環境がもたらす機会を活かし、場合によってはリスクを低減することができます。
マイケル・カーメン
ウィリアム・クレイグ
マーク・ワトソン
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