2023年市場展望

プライベート・エクイティ:買い手市場到来の兆し

2023-12-30
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2023 Alternative Investment Outlook

下記コメントは2022年11月(米国時間)時点のものであり、将来予告なく変更される場合があります。

2023年に向けて、プライベート・エクイティのバリュエーションはここ最近みられなかったほど魅力的な水準にあります。これは、ベンチャーキャピタルからレイトステージに至るまで、プライベート・エクイティ市場全体に当てはまると言えるでしょう。市場は2022年初めに調整局面入りし、同時に上場株式も大幅下落しました。それ以降、多くの投資家が高インフレ、高金利、高ボラティリティという、これまでに経験したことのない新たな市場環境に直面しています。しかし、こうした投資環境がもたらす不確実性やリスクとは裏腹に、私の30年以上にわたる投資経験の中でこれほど投資機会が魅力的な状況はまれと考えます。この見通しは、マルチプルの正常化や幅広いセクターにおける継続的な技術革新に加え、多くの魅力的な案件に対する競合相手の減少に下支えされています。

プライベート・エクイティの投資活動の減少を俯瞰する

投資家や企業が新たな市場環境への適応に苦労する中、2022年にプライベート・エクイティの新しい投資案件の数と投資額は急激に減少しました。その影響はアーリーステージ、ミッドステージ、レイトステージにわたる市場全体に表われています。例えば、消費とテクノロジー・セクターのベンチャーキャピタルの案件数は大幅に減少しました(図表)。

特に落ち込みが激しいのはレイトステージです。企業側は最初(バリュエーションの切り下がりの)「否定」から入り、(バリュエーションの切り下がりを抑えるための)「交渉」、最終的にバリュエーションの切り下がりという新たな現実の「容認」へと苦悩の段階を経てきました。いずれ2021年当時のバリュエーション水準に回帰すると期待を持ち続けている企業もありますが、私は短期的にその可能性は低いと考えます。2021年のバリュエーションは超低金利、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大を背景に加速したトレンド、今後数年に再浮上する可能性が低いとみられるその他のマクロ要因に下支えされていました。現在のバリュエーションを取り巻く環境は、より正常化しつつあるとみられます。

図表

消費財とテクノロジー・セクターのベンチャーキャピタル案件

投資額(10億米ドル)と案件数

上記は消費財とテクノロジーのセクターにおける、1億5,000万米ドル超のベンチャーキャピタルの投資額と案件数。出所:ウエリントン・マネージメント作成。2022年10月10日時点。※上記は過去の実績であり、将来の運用成果・市場環境等を示唆・保証するものではありません。

投資活動が鈍化してもイノベーションは継続

投資活動が減少する中、新規株式公開(IPO)件数の落ち込みを懸念しているかどうかという問いについては、私はIPO市場についてさほど心配していません。アーリーステージ、ミッドステージ、レイトステージの未上場企業を見ても、バイオテクノロジーや気候テック(気候変動に対処する技術)などの分野をはじめ、イノベーションの勢いが衰えることはないでしょう。私たちはディスラプション(創造的破壊)を起こしている技術の一端に触れているに過ぎませんが、先端技術はいずれ革新的な企業の上場につながっていくはずです。IPO市場は過去にも低迷しましたが、歴史的に見ると1年~2年程度で復活する傾向にあります。

興味深いことに、ディスラプションを起こしている企業の多くが大きく成長し、優れたビジネスモデルを維持している中、私たちは現在、こうした企業に一年前と比べてバリュエーションがより妥当な水準で投資することができます。中でも、経験豊富な経営陣らが豊富な予備資金の準備や、新たな市場環境に適応するための投資計画などに取り組んでいる企業は、足元の難局を乗り超え、魅力的な投資機会を見出していくでしょう。

2023年のプライベート・エクイティ投資の展望

現在のプライベート・エクイティ市場は不安定であり、マクロ経済環境は引き続き、未上場企業にとって多くのリスク要因と機会の両面を抱えています。重要なのは、ここ数年の急激なバリュエーションの上昇と案件の競争激化の後、プライベート・エクイティ市場が「買い手市場」に移行したとみられることです。

これまで過熱気味だった市場で取引してきた多くの大手投資家が投資を手控えているがゆえに、競争が緩和され、アクティブ運用者が魅力的なバリュエーションで長期的な勝ち組企業を発掘する余地が生まれています。2023年は潤沢な待機資金(ドライパウダー)を持つ投資家にとって、魅力的な投資環境になると展望します。

Michael Carmen

マイケル・カーメン

プライベート・インベストメント 共同ヘッド