地政学：政策の移行は構造的な追い風？

2022年のマクロ経済動向を左右したのは地政学的混乱と政策移行という２つの要因でした。世界は現在、かつて穏やかであった地政学とマクロ経済の環境が大きく変化し、かつ相互に連動するという構造問題に直面しています。本稿では、来年以降注視すべきテーマと、それらが提供する投資機会について論じます。

2023年以降に注視すべき5つのテーマ

この先のグローバル投資のリスクと機会を見極めるために、以下のような、相互に関連するマクロ経済テーマを注視しています。

1. 脱グローバル化

新型コロナ感染症のパンデミック（世界的流行）は今も続くサプライチェーンの混乱を引き起こし、特に、ITのインフラに大きな影響を与えました。その結果、国家の安全保障を巡る問題が生じ、政策当局を脱グローバル化へと向かわせました。このトレンドは今後加速すると予想します。その影響を受ける可能性が高いセクターや産業は以下の通りです。

•  半導体
• バイオテクノロジー
• 再生可能エネルギー関連テクノロジー
• クリティカルミネラル（経済安全保障にとって重要な鉱物）
• 人口知能（AI）
• 宇宙関連テクノロジー
• 次世代製造テクノロジー
• 次世代コミュニケーション
• ロボティクス（ロボット工学）
• 上記以外の民間および軍事セクター
• 金融セクターの一部

2. インフレと金利の上昇

パンデミックをきっかけとした構造的なインフレ高騰を、世界中の中央銀行が利上げによって抑え込もうとしています。この金融引き締めの最終的な結果は世界経済の減速であり、将来にわたる波及効果を持つとみています。

3. 大国間紛争リスクの上昇

大国間の緊張が高まると予想します。これは、軍事衝突のリスクやサイバーセキュリティ・リスクを高め、さらには、政策リスクが深刻化する可能性を示唆します。 

4. インド太平洋地域と欧州の軍事化

インド太平洋地域と欧州は、多国間軍事同盟など組織的な対応を強化し、国防支出を拡大させています。世界的に軍備競争が激化すると予想します。 

5. 政治イベント

多くの国で政治的な対立が深刻化し、各国内での政治的軋轢と世界的な機能不全が起こる可能性があります。11月の中国共産党第20回全国代表大会と米国の中間選挙、欧州で予定されている国政選挙、米国と台湾の2024年の大統領選など、世界の様々な政治イベントの影響を注意深く見守っていきます。

投資に及ぼす影響

上記の地政学上の環境変化と政策移行は長期にわたり破壊的とも言えるほどの大きな影響を及ぼすと予想します。このような状況を背景に、企業間の違いがより鮮明になり、魅力的な投資機会が生まれる可能性があります。この環境においては、地域、国、産業、企業、資産クラスの別なく、テーマ主導の投資が有効であり、特に、各投資テーマにおける勝者を見極める能力を持つアクティブ運用戦略に適していると考えます。
つまり、世界的な地政学上の変化と政策移行はリスクと共に投資機会も生み出すと予想しています。アクティブ運用戦略にとって、上記の移行の幾つかは今後何年にもわたる強力な構造的追い風となる可能性があります。