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ジェイミー・ライス
- 株式ポートフォリオ・マネジャー
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下記コメントは2022年11月(米国時間)時点のものであり、将来予告なく変更される場合があります。
2021年2月17日以来632日間。これは、新興国株式の弱気相場の最長記録です。しかしながら、新興国株式市場の流動性と成長率への逆風は2023年も続くと予想します。本稿では、この厳しい環境下で新興国株式に投資を行う際に検討すべき3つの点、さらには、来年の勝者と敗者について論じます。
米連邦準備理事会(FRB)の近い将来の利上げについては、既に株価に織り込まれているものの、ターミナルレート(政策金利の最終到達水準)については、その可能性は低いと考えます。米国の金融引き締めペースは減速してはいますが、FRBが利上げを中断するまでには至っておらず、米ドルは今や他のG7諸国通貨に対して20年来の高値を付けています。図表は、新興国株式のグローバル株式に対する相対パフォーマンスと米ドルの値動きとを比較したものです。私たちが算出している先行指標は、流動性が世界的に逼迫した状態が今後6カ月間は継続することを示しています。ただし、2つの市場、中国とブラジルは明らかな例外です。前者は、影響は軽微であるものの、年初来緩和傾向にあり、後者は2023年4-6月期に緩和に転じる可能性があります。
図表
新興国株式の相対パフォーマンスと米ドルの推移
出所:トムソン・ロイターに基づき、ウエリントン・マネージメント作成。時点:2010年1月1日~2022年10月20日。※上記は過去の実績であり、将来の運用成果・市場環境等を示唆・保証するものではありません。
上記の流動性の状況は注意すべき点です。なぜならば、足元の新興国の弱気相場は「新興国の危機」ではなく、先進国市場の危機の影響を受けたものだからです。重要なのは、新興国のファンダメンタルズが、特に前回の金融引き締めサイクルとの比較において、相対的に健全性を維持していることです。しかし、市場の動向を左右するのは流動性です。現在の環境が続けば、一部の新興国は改めて試されることになるでしょう。米国の金利は、新興国株式が投資対象となり始めた1990年代初め以降では異例の高い水準に達しています。結果として、2023年には、どの新興国が脆弱であるかがあぶりだされることになるでしょう。
今後については、インド、韓国、フィリピンなど、エネルギーの純輸入国の外貨準備高を注意深く見守っていく意向です。米ドルが上昇すればするほど、これらの国の中央銀行は(そして、その他の中央銀行も)金融引き締め策を採る必要性に迫られ、トレードオフ関係にあるインフレ率と成長率との間で困難な決断を強いられるかもしれません。
しかし、すべての新興国市場が現在の環境に対して等しく脆弱なわけではありません。例えば、ブラジルとメキシコでは、前者はコモディティ、後者は米国経済との連動性が高い市場ですが、当面、相対的な勝者となる可能性があります。両国のインフレのピークはとうに過ぎ、ロシア・ウクライナ紛争から打撃を受ける可能性は低く、中国の影響も限定的です。
重要なのは、米ドルと流動性の状況が最終的に反転した時には、新興国市場も全体として反転すると予想されることです。それでは、そのような転換があった後でも、中国市場の劣後は続くでしょうか。私たちは続くと考えます。ただし、米国との地政学的な大国間闘争の行方次第でしょう。そして、中国の高性能半導体開発を阻止せんとする米国の最新の政策は、中国の最近の政治情勢と相まって、来年に両国間の緊張が緩和する可能性が低いことを示します。
米ドル高が反転し、新興国市場全体にとって現在よりも良好な環境が出現するまでは、市場間の格差拡大によって生じる投資機会を追求すべきと考えます。インフレの高騰、金利の上昇、脱グローバル化による国家間の緊張を特徴とする世界でも生き残れる市場を重視することが有効な戦略となるでしょう。
ジェイミー・ライス