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キャンプ・グッドマン
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下記コメントは2021年11月末(米国時間)時点のものであり、将来予告なく変更される場合があります。
2021年も終わりに近づく中、私たちの債券投資の考え方は以下の2点に要約されます。すなわち、1)2022年が進むにつれて、現在のリスク・エクスポージャーの一部を削減し、2)トータルリターンの可能性がより高い非伝統的なセクターへの投資を検討すべきというものです。
本稿執筆時点(2021年11月末)において、全体としては中立的なリスク・エクスポージャーを保持しながらも、一部のクレジット・セクター、特に、高利回りセクターに対してはここ数週間で慎重な見方を強めています。一方で、より楽観的な見通しも維持しています。すなわち、労働市場の回復や新型コロナウイルス感染症情勢の改善を支援に世界経済は継続的にトレンドを上回るペースで成長し、一部のスプレッド・セクターはその恩恵を受けるだろうというものです。
供給ボトルネックが幾分か緩和したとしても、世界的なインフレは米連邦準備理事会(FRB)や市場が予想する以上に持続し、それゆえに、FRBの金融緩和解除に対する忍耐や覚悟が試されることになるかもしれません。FRBは今後数カ月で資産購入のテーパリング(量的緩和縮小)を進める予定ですが、引き続き景気に支援的な金融政策が採られ、その効果は追加財政刺激策(米国のインフラ投資法案など)によって増大される可能性があります。
バリュエーションは、多くのクレジット・セクターで割高な水準にあり、市場が予期せぬテールリスクに直面した場合には、リターンがマイナスに陥る可能性を示しています。しかし、債券市場全体を見渡してみれば、特に非伝統的なクレジット・セクターなど、一部に投資を検討すべき魅力的な機会が存在します。従って、2022年に債券投資で高いリターンを求めるならば、「伝統を破る」必要があるのではないかと考えます。
バリュエーションが一般的に非常に割高であるにもかかわらず、クレジットのリスク・エクスポージャーについて、アンダーウエイトではなく中立を維持している要因は何か。この問いに対する簡潔な答えは、「バリュエーション以外のすべて」です。バリュエーション以外の定量的指標の大部分は今のところ極めて良好です。企業は概ね保守的な姿勢を維持し、世界の中央銀行の政策は(引き締めに転換しつつも)依然として支援的、さらに市場の需給関係も良好です。これらの要因を踏まえると、今のところは、より警戒的なポジションが必要であるとは考えられません。
上記の指標のうち、金融政策(政策金利見通しを含む)は「警戒信号」の点滅をいち早く知らせるものであるため、今後注意深く見守っていきます(図表1)。特に、構造的インフレの上振れや長期化の予想が示された場合、それは主要中央銀行が早期引き締めの必要性を感じていることを意味します。2022年に入って早期かつ急激な引き締めといった誤った政策が採られた場合には、リスク・エクスポージャーをよりディフェンシブに変更する意向です。
私たちの定量分析では捉えられない、市場にとっての別のプラス要因は前例のない大規模な財政刺激策です。財政と金融両面からの大規模な支援策は世界経済の拡大が2022年も持続するとの確信を私たちに与えてきました。
それにもかかわらず、債券運用に関して、リスク・エクスポージャーの削減を検討すべきなのはなぜか。ここでの決め手もまた、割高で、恐らく限界に近いバリュエーションです。私たちの分析に基づけば、スプレッドが現在のような水準に達した時は、リスク・エクスポージャーの削減を検討すべきであると共に、それは徐々に進められるべきと判断されます。
図表1
FRBの引き締めまたは緩和サイクル時のハイイールド債券の超過リターン
灰色の部分はリセッション時期を示す。オレンジ色の棒線は直近の緩和サイクルでの観測値。
出所:ブルームバーグ米国ハイイールド債指数、米連邦準備理事会(FRB)のデータに基づきウエリントン・マネージメント作成。期間:1987年1月~2021年10月。※上記は過去の実績および将来の予測であり、将来の運用成果・市場環境等を示唆・保証するものではありません。
クレジットのバリュエーションを検討する方法の一つは国債との比較です。例えば、私たちは多様なハイイールド債指数の「ブレークイーブン」デフォルト率を調べます。図表2は、今後5年間の各ハイイールド債指数が米国債と同等のリターンを確保できる予想累積デフォルト率(青色棒線)を過去最悪のデフォルト率(水色棒線)および過去の平均デフォルト率(オレンジ色棒線)と比較しています。(ブレークイーブン・デフォルト率はデフォルト損失と獲得スプレッドが等しくなるデフォルト率として算出されます。)
図表2の一番左側の棒線が示すように、米国ハイイールド債券で獲得されるスプレッドが相殺されるデフォルト率は21%です。対して、平均の実現デフォルト率は22%です。これの意味するところは、今後5年間のデフォルト率が平均的水準であるならば、リスク回避型の投資家が保有すべきは米国債の方だということです。ハイイールド債券のリスクプレミアムを獲得するためには、デフォルト率は平均を大きく下回る必要があります。つまり、ハイイールド債券は非常にバラ色の、恐らくは非現実的な結果を織り込んでいるということです。目先のデフォルト率は確かに低いと予想されるものの、市場が予測する数年先のデフォルト率の信頼性はそれほど高くはありません。対照的に、バンクローンのデフォルト損失に対する耐久性は高いと見ています。そのため、私たちは最近ハイイールド債券よりもバンクローンを選好しています。
図表2
ハイイールド債指数の5年間ブレークイーブン累積デフォルト率
1 1985年以降。過去最悪の累積デフォルト率を記録した5年間は、ハイイールド債券については1997-2001年、Ba格およびB格については1989-1993年、Caa格については1997-2001年。
出所ブルームバーグ、JPモルガンのデータに基づきウエリントン・マネージメント作成。期間:1994年1月~2021年10月。※上記は過去の実績および将来の予測であり、将来の運用成果・市場環境等を示唆・保証するものではありません。
少数ではあるものの、一部のクレジット・セクターについて、2022年に超過リターン創出の可能性が高いと見ています(図表3)。
図表3
セクター別トップダウン評価の比較:超過リターン予測シナリオ
デュレーション調整ベースの対米国債超過リターン。運用チームが過去のリターンとボラティリティの特性分析に基づき行った将来の超過リターンとボラティリティの予測シミュレーション。結果予測を他のファンダメンタルズや需給要因データと併せて検討し、どのセクターが魅力的であるかを判断。
出所:ウエリントン・マネージメント。2021年9月30日時点。※上記は過去の実績および将来の予測であり、将来の運用成果・市場環境等を示唆・保証するものではありません。上記の見通しはウエリントン・マネージメントによるの見解に基づくもので、必ずしも客観的な市場データに基づくものではありません。
中国のレバレッジ解消:売上高で中国第二の不動産開発会社の信用不安問題はすぐには解決されず、同国の不動産セクターには市場の圧力が継続的にかかると予想しています。しかしながら、中国政府による不動産業界に対する「締め付け」は長期的にはプラスに働く可能性があります。「三条紅線」(3つのレッドライン:総資産に対する負債比率70%以下、自己資本に対する負債比率100%、短期負債を上回る現金保有の3つの指標に基づき不動産開発会社への銀行融資を制限する政策)などの措置は長期の成長持続を可能にするためのレバレッジ解消を狙っているからです。足元の中国経済と資産価格は、2021年の同国の政治日程や規制強化など、同国内外で同時期に発生したショックの影響を受けています。幸い、これらは現在のところ、中国経済の発展や長期的勢いを妨げてはいないようです。最近の出来事の副次的影響が今後数カ月間に経済の正常化を妨げることがないかを注視していきます。
世界的なインフレ:最近発表された経済指標には大きなブレがあり、世界のインフレの速度と範囲を見極めるには依然として多くの不確定要素が存在します。私たちの現在の見方は、一時的な供給要因によるインフレは今後数カ月である程度後退するものの、インフレの構成要素の一部はFRBや他の中央銀行が予想する以上に勢いを保ち、それゆえに、それぞれの金融緩和策を維持する意思と能力が試されることになるだろうというものです。各国中央銀行は引き続き、一過性のインフレ要因を見抜くと共に、より持続的なインフレ要因(例えば、賃金上昇や住宅価格)を見逃さないようにするという課題に取り組む必要があるでしょう。
ここから数カ月間は、特にバリュエーションが割高なままである、または、一層上昇することがあれば、リスク・エクスポージャーの削減が適正な債券運用戦略となるでしょう。しかし、例えば、ボラティリティの上昇で銘柄固有の要因による格差が拡大した場合や、債券市場の非効率性が増した場合には、機動的な対応を採るべきと考えます。依然として不確実な環境が続くであろう2022年には、信用力と流動性の高い現金や先進国国債により多くの資産を配分しつつ、リターンを高めるため、必要に応じて、上記で取り上げた非伝統的なセクターへの投資を行う、一種の「バーベル投資」が有効な戦略になると見ています。
キャンプ・グッドマン
ロバート・バーン