2022年市場展望:テック&イノベーション

テクノロジーが起こすディスラプションと投資機会

2022-12-31
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下記コメントは2021年11月末(米国時間)時点のものであり、将来予告なく変更される場合があります。


2022年のテクノロジーとイノベーション(革新)の分野への投資を展望すると、割安感があり引き続き魅力的な投資機会であると考えます。2021年の世界市場は、金利の上昇、サプライチェーン(供給網)の混乱、異なる経済活動の再開、インフレ懸念などのマクロ経済要因にとらわれ、結果として企業のファンダメンタルズが後回しにされました。

しかし、重要なのはこうしたマクロ経済要因がある中でもテクノロジーがもたらす投資機会は、モバイル決済の普及、自動化、必要不可欠なハードウエアのイノベーションなど、数多くの構造的な追い風を受け続けていることです。本稿では、2022年に向けてテクノロジー分野のグローバル産業アナリストと運用者らの確信度が高い長期的なテクノロジーのテーマにおける投資アイデアを紹介します。

大手決済サービス会社

ブルース・グレーザー
ポートフォリオ・マネジャー兼グローバル産業アナリスト

私たちは2022年、経済再開の継続、旅行の再開、それに伴う国際決済の増加がいずれも、デジタル決済の普及という長期的なトレンドにつながると考えています。注目すべきは、主要な大手決済サービス会社がパンデミック(世界的大流行)関連の規制、ディスラプション(創造的破壊)を巡る懸念、ファクター・ローテーションなどを背景に、2021年に大きく売られたことです。ただし、この分野は2022年にフィンテックの中でも堅調なパフォーマンスが見込めるサブセクターの一つになると予想されます。

大手決済サービス会社のファンダメンタルズとバリュエーションとのギャップは、これまでになく大きいと考えられます。これらの企業は新型コロナウイルス禍以前に大きくアンダーパフォームしていましたが、現在では以前よりも急速に成長しており、今後も高い成長性が期待できるとみられます。こうした特有の市場環境が、これまでにない投資機会をもたらしています。市場のミスプライス現象が続くようであれば、企業は株主価値を高めるために、積極的な自社株買い、経営統合の可能性、配当や増配などより大胆な行動に出ると考えられます。総合的にみて、従来の主要決済サービス会社は、2022年に大きく成長する可能性を秘めていると考えます。 


2021年に売り込まれたの新型コロナウイルス禍の勝ち組企業の今後

マイケル・マスデア
ポートフォリオ・マネジャー兼インベストメント・サイエンス・ヘッド

ブライアン・バーベッタ
ポートフォリオ・マネジャー兼グローバル産業アナリスト

2022年を展望するにあたり、バリュエーション、対前年比での業績成長のハードルの高さ、成長の減速、不確定要素の多いホリデーシーズンなどを背景に、短期的に高い確信度を得るには難しくなっています。しかし、私たちはこのような不確実性こそが、景気サイクルを通じて長期的な成長が期待できる、革新的で適応力のある企業への投資機会をもたらすと考えています。

特に2022年に向けて、2021年に売り込まれた新型コロナウイルス禍の勝ち組企業への投資機会が増しているとみられます。デジタルエコノミー、ヘルスケア分野のイノベーション、自動化の進展といった主要分野は、バリュエーションの観点から再び魅力的な投資機会を提供していると考えられます。デジタルエコノミー分野への投資機会は、eコマースからデジタル広告やデジタル金融に至るまで多岐にわたります。これらの企業は、幅広い企業がクラウド、人工知能(AI)、ビッグデータといったイノベーションをバネに成長しています。ヘルスケア分野では、新しい医療ツールや手法により、科学者が未だ満たされていない医療ニーズに応えるための革新的な治療薬を開発することができるようになり、大きな成長の可能性を秘めています。さらに、様々な自動化を手掛けている企業は、2022年も引き続き世界的な自動化の流れの加速から恩恵を受けると考えられます。


アジアのテクノロジー企業のサプライチェーン

ヤシュ・パトゥディア
ポートフォリオ・マネジャー兼グローバル産業アナリスト

アジアのテクノロジー企業の多くが旧来のサプライチェーンを壊すディスラプションを起こしているため、2022年はそれらの企業にとって明るい年になるとみられます。実際、最先端の半導体メーカーなど、アジアのテクノロジー企業は、急成長中を遂げている消費者向け市場のグローバル・サプライチェーンを形成しています。さらに、ローカライゼーション(現地化)によってアジア諸国の国内有力企業の新たな成長機会が生まれ、国内のサプライヤーで構成されるエコシステムへの移行が進んでいます。アジアのソフトウエア企業やインターネット企業も、特にフィンテック、ゲーム、SNSの分野において、自国市場からグローバルな競合を押し出しつつあります。

私たちは、こうしたトレンドが2022年も継続すると考えています。特に、消費者や企業のデジタル化、自動車の電動化、自動化、拡張現実(AR)、仮想現実(VR)など、アジアのテクノロジー分野の構造的なテーマの組み合わせによって生まれる成長機会に期待しています。この成長機会には、メタバース(仮想空間)を実現する上で極めて重要な役割を担うアジアのテクノロジーのハードウエアインフラも含まれます。デジタル化が加速し、伝統的な産業や経済に変革をもたらしたことで、テクノロジーセクターはここ数年で劇的に変化しています。重要なのは、短期的には地政学的な問題、ならびにプラットフォームやインターネットのビジネスに対する中国政府の監視をはじめとする各国の規制強化により、不安定な局面が続くと考えられることです。しかし、アジアの人口動態やテクノロジー企業の強い研究開発能力といった長期的な追い風を受けて、私たちはこの変革が今後複数年にわたる成長機会をもたらすと考えています。


まとめ

2022年のテクノロジーセクターは、マクロ経済の逆風、地政学的な問題、構造的な追い風という相反する要因の影響を受け続けるでしょう。インフレ進行や金利上昇はテクノロジーセクターのリスク要因となりますが、前述の例は2022年およびそれ以降も成長を促進する、持続的かつ長期的なトレンドの中でも特に重要な分野であると予想されます。これらの要因に加え、新型コロナウイルス禍からの回復や経済再開の道筋が国によって異なるため、不安定な環境下で潜在的な勝者と敗者を見極めるにはボトムアップリサーチのアクティブ運用が大きな役割を果たすと考えます。

テクノロジーとイノベーションにおけるESGの考慮

テクノロジーとイノベーションの分野への投資における主要テーマの多くは、ESG(環境・社会・ガバナンス)要素と密接に関連しています。プラス面としては、モバイル決済、持続可能なイノベーション、メドテックの進歩は金融包摂の促進、気候変動への対応、ヘルスケアへのアクセス向上に大きく貢献しています。

2022年もこうしたトレンドは続くと考えられます。モバイルバンキングの普及は、先行している中国や東南アジア、インドやブラジルといった主要市場でもさらに進むでしょう。また、電気自動車(EV)、環境に配慮した包装、再生可能エネルギーの普及も進展するとみられます。さらに、様々な革新的技術により、ヘルスケアへのアクセスも引き続き拡大していくでしょう。

一方、テクノロジーのイノベーションがESGに関連する問題を引き起こしている分野もあります。それらの分野では今後数年間でより直接的な対応が必要になると考えます。例えば、エネルギーを大量に消費するブロックチェーン技術や暗号資産、絶え間ないハードウエアの更新によって発生する廃棄物など、テクノロジーが地球環境に与える影響は2021年に大きなニュースになり、2022年も続くとみられます。さらに、消費者、企業、経済がテクノロジーにますます依存するようになったことを受けて、データプライバシーなどの問題に対処するために、さらなる規制措置がとられる可能性があります。テクノロジーとイノベーションは私たちを未知の領域に導きますが、2022年以降、ESGの考慮がテクノロジーの進歩と結びつくことは間違いないでしょう。

Bruce Glazer

ブルース・グレイザー

ポートフォリオ・マネジャー兼
グローバル産業アナリスト
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マイケル・マスデア

ポートフォリオ・マネジャー兼
インベストメント・サイエンス・ヘッド
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ブライアン・バーベッタ

ポートフォリオ・マネジャー兼
グローバル産業アナリスト
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ヤシュ・パトゥディア

グローバル産業アナリスト